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中年以上の女性に多い腰痛【腰椎変性すべり症】症状・原因・治療まとめ

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1.腰椎変性すべり症について

腰椎とは背骨の中で5つの骨で構成される骨をいいます。
この部位でひとつの骨が何らかの理由で前方あるいは後方にずれることを腰椎変性すべり症といいます。

40歳以上の女性に多く発生し、男性に比べて約3倍といわれています。
腰痛を起こす疾患の中で本疾患が1~6パーセントの割合を占めています。

原因としては加齢や腰部への負担により背骨と背骨の間にある椎間板という組織や靭帯、関節に負荷がかかり腰椎が徐々にすべります。
すると椎間板や靭帯に炎症が起きたり、神経の通り道が狭くなり圧迫を受けることによって様々な症状が生じます。
他にも女性に多く、卵巣摘出術後に多いため内分泌の関与や全身の関節弛緩などの関与も指摘されています。

症状として、初期には腰痛が起こり、進行すると足の痛みや痺れなども起こります。
長時間歩行すると足の痛みや痺れが生じて、休憩すると症状が軽快する間欠性跛行(かんけつせいはこう)が起こることもあります。

レントゲンにてすべりの確認を行うことができ、MRIやその他の検査では圧迫の程度も調べることができます。

神経麻痺や筋力低下、便秘や排尿障害などの神経障害の症状が著しい場合は手術が選択されることもあります。
それ以外の場合は基本的に保存療法で、経過をみます。

 

2.腰椎変性すべり症の症状

◆腰の痛み

椎間板や靭帯に炎症が起こると初期には腰の痛みが起こります。

◆足の痛みやしびれ(坐骨神経痛)

神経への圧迫が生じると足に痛みや痺れが起こることがあります。
長時間の歩行により足に痛みや痺れが起き、休憩すると症状が軽減する間欠性跛行(かんけつせいはこう)という症状が特徴的です。

◆足の筋力低下

神経の圧迫によりその神経が支配している筋肉の力が低下、麻痺することがあります。
初期には足が出にくいといった症状も起こります。

◆直腸・膀胱障害

病態が進行すると便秘や排尿障害(頻尿・尿漏れ)などが起こることもあります。

 

3.腰椎変性すべり症の原因

 

 

腰椎にすべりが起こる原因としては日常的な動作での負担や加齢などがあります。
その他にも女性に多く、卵巣摘出術後に発生しやすいことから内分泌の関与や全身の関節弛緩などの関与も指摘されています。

すべりの発生には椎体の後方を支持する組織の水平化という素因があり、そこに椎間板などの前方にある組織の機能が破綻しすべりが発生することが指摘されています。
しかし、椎間板の異常からすべりが起こるものと、椎間関節の異常からすべりが起こるものを一次性とする二つに大別され、結論はまだ出ていません。

腰椎にすべりがあるからといって必ずしも症状が起こるわけではありません。
腰痛や足の痺れが何によって起こっているかは様々な検査が必要となります。
本疾患で症状が起こる理由として、

・椎間板の高度な不安定性とそれに関連した椎間関節の障害
・椎体の前方への滑りに伴い椎間板のびまん性の突出
・椎弓の重なり
・黄色靭帯の腹側への捲れ込み

などが生じると腰痛や足の痛みや痺れ、直腸・膀胱障害が起こります。

4.腰椎変性すべり症の検査と診断

4-1.問診・視診

脊柱管が狭窄するため間欠性跛行が起こることがあります。
その内容や時間、姿勢による変化などの詳しい問診が必要です。

4-2.画像検査

レントゲンにてすべりの有無は確認できます。
MRIなどの検査では神経の圧迫の程度を詳しく検査することができます。
第4腰椎にすべりが多発します。

また他にも神経根ブロック注射を行うことによって圧迫部位を同定することもできます。
第5腰神経根が対象となります。

しかし本疾患では動的な要因が関与するため安静時に撮影するMRI検査では異常がない場合もあります。

 

5.腰椎変性すべり症の一般的な治療

症状が軽度な場合は保存療法で経過をみます。
しかし麻痺や直腸・膀胱障害、症状の進行が著しい場合には手術が選択されます。

5-1.保存療法

◆安静・固定
初期の腰痛時には安静にします。
症状の悪化する動作の中止を指導し、硬性・軟性のコルセットを用います。

◆生活指導
症状が悪化するのは続けて歩行する時に多いです。
そのため移動手段を自転車やバイクにするよう指示することもあります。

◆運動療法
腹部や腰部の筋力を強化したりストレッチします。

◆薬物療法
基本的に痛みを抑える薬が処方されます。
症状が強い場合は圧迫を受けている神経に対してブロック注射を行います。

5-2.手術療法

神経を圧迫している部位を除去する手術や不安定性がある場合は固定術を併用して行います。

 

6.腰椎変性すべり症と間違いやすい疾患

変性すべり症はすべりがあるからといって必ずしも症状がでるわけではありません。
そのため様々な検査で他の疾患との鑑別を行います。

◆隣接椎間板でのヘルニア

背骨の骨と骨の間にある組織を椎間板といいます。
この中にある髄核というゲル状の組織が椎間板を破って神経を圧迫することを椎間板ヘルニアといいます。

◆馬尾腫瘍

馬尾腫瘍とは腰椎の2番目以下に起こる硬膜内髄外腫瘍の総称したものです。
この部位に腫瘍ができると本疾患と同じような症状が起こります。

◆腰椎分離症

腰椎の関節突起部が分離することを腰椎分離症といいます。
解剖学的に神経圧迫症状は起こりにくいですが、神経組織の炎症や機械的刺激により神経障害が起こることもあります。
レントゲンにて鑑別可能です。

◆梨状筋症候群

坐骨神経は骨盤から足にかけて伸びる神経で、梨状筋という筋肉のトンネルを通ります。
何らかの原因により梨状筋が緊張すると坐骨神経を圧迫し足やお尻にしびれや痛みが起こります。
座る姿勢で悪化し、運転やしゃがみこんだ姿勢で特に悪化します。

◆腰椎の外傷

尻餅をついた際に起こりやすい腰椎の圧迫骨折などがあります。
明確な機転があれば鑑別しやすいですが骨粗鬆症などでは椅子に座っただけでも圧迫骨折が起こります。
レントゲンにて椎体に異常がないか検査します。

◆脊髄性間欠性跛行

稀な疾患ですが何らかの理由により脊髄に血流不全が起こり間欠性跛行を呈することがあります。

◆閉塞性動脈硬化症

主に足にある血管が慢性的に閉塞することで種々の症状が起こります
軽度の場合では冷感や足のしびれなどが起こり、進行すると足が壊死に至ることもあります。

本疾患との類似症状として間欠性跛行(かんけつせいはこう)があります。
鑑別方法として、
脊柱管狭窄症による間欠性跛行は立ち止っただけでは症状が軽快・消失しないということです。
血行性の間欠性跛行では立ち止ると症状が軽快・消失します。

 

7.腰椎変性すべり症の予後と後遺症

予後は良好です。
安静にしていれば腰部の炎症は治まります。
神経圧迫による症状が著しい場合は手術を行いますが比較的経過も良いです。
・罹病期間が長い
・神経症状が重篤
・画像上神経の圧迫が高度
・圧迫が多椎間にわたっている
・すでに神経麻痺を認める
などの所見や症状がある場合は術後でも回復に限界があります。

 

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