手の痛み, 痛み
3.282018
見逃されやすい手の痛み【舟状骨(手根骨)骨折】症状・原因・治療まとめ
1.舟状骨骨折とは
手のひらを強くついて転倒した時に、手根骨にある舟状骨が折れる骨折です。
手根骨骨折の中では発生頻度は最も高く、20歳前後の青年に多いです。
手関節捻挫と見逃される事が多く、放置すると偽関節になる事もあるので注意が必要です。
※偽関節とは、骨の損傷部の癒合が完全に停止したものをいいます。
・原因
ほとんどの場合、転倒や転落した際に手のひらをつき受傷する事が多いです。
スポーツや交通事故により、手をつき手関節の背屈が強制された時にも生じます。
・症状
急性期では、手関節母指側の軽度の腫脹や痛みがあります。
手関節の運動制限と運動時痛は背屈と橈屈(手関節を親指側に曲げる)した際に著明です。
放置された場合は、手関節の運動制限や運動痛、脱力感などがあります。
・治療
舟状骨は血流が悪く、癒合しにくい部位にあるため治りにくい骨折の1つです。
早期に発見された場合は、ギプスで8〜12週間固定します。
ギプス固定を長期間行っても骨癒合しない場合もあり、スクリューを用い内固定する手術が行われる事が多いです。
・後遺症
受傷時に骨折が見逃され、適切な治療が行わなければ、偽関節を生じます。
偽関節により、手関節の可動域制限や運動時痛、握力低下を自覚するようになります。
また、手根不安定症や変形性手関節症を生じる事もあります。
2.舟状骨骨折の症状
◆手関節周囲の痛み
手関節周囲に痛みがでます。
特に、スナッフボックス(親指の付け根にある小さいくぼみ)および舟状骨結節部に一致した圧痛がみられます。
握手をすると手根部に痛みが増し、脱力感などが出ます。
放置すると一時的に症状が治りますが、骨折部が癒合せず偽関節となり、手関節の変形が進行します。
【引用文献:柔道整復学・理論編 改訂第5版】
◆手関節周囲の腫れ
手関節とくに、スナッフボックスに腫れがみられます。
腫れは軽度の場合が多いため、捻挫として見逃される事が多いです。
◆可動域制限
手関節を動かすと痛みがでるため、可動域が制限されます。
特に手関節の背屈、橈屈に動かすと痛みが増強します。
3.舟状骨骨折の原因
スポーツや交通事故などの、転倒や転落時に手のひらをついて受傷する事が多いです。
転倒時に手関節の背屈が強制され、橈骨茎状突起が支点となり、舟状骨が圧迫されて生じます。
パンチ動作で拳が物に当たった際に、第2中手骨を介した外力が舟状骨に加わり受傷する事もあります。
・舟状骨骨折の分類
舟状骨は橈骨と周囲の手根骨の間で圧迫され、様々な型の骨折が起こります。
下記の図の4型に分類され、中央1/3部(腰部)骨折が多いです。
特に中央1/3部と近位1/3部位での骨折は、近位骨片が血行障害のため壊死しやすいです。
【引用文献:柔道整復学・理論編 改訂第5版】
4.舟状骨骨折の検査と診断
4ー1.触診・視診
スナッフボックスに圧痛があるか確認します。
腫れも軽度なため手関節捻挫と間違い、骨折が見逃されやすいので、圧痛部位の確認が重要です。
痛みのため手関節の可動域が制限され、特に背屈、橈屈運動時に著明です。
4ー2.画像検査
レントゲンにて骨折や転位の有無を検査します。
レントゲンで骨折が分からなくても、痛みが強い場合は骨折を疑う事が大切です。
初期にはレントゲンに写らないこともあるため、CTやMRI検査を用い診断する事が多いです。
5.舟状骨骨折の一般的な治療
舟状骨骨折は血行が悪いため、骨癒合しにくい骨折の1つです。
転位の少ない骨折のみが保存療法の適応です。
長期間のギプス固定を行うため、関節が拘縮するので、ギプスを外した後のリハビリが必要です。
高齢者や早期復帰を望むスポーツ選手、ギプス固定で骨癒合が得られない場合は手術の適応です。
5ー1.骨折の整復
母指を長軸方向に牽引し、舟状骨部を圧迫し手を軽度橈側屈曲することにより整復します。
5ー2.保存療法
◆固定
手関節軽度背橈屈位、手指はボールを握った形で前腕近位から母指基節骨までのギプス固定を行います。
骨折部により異なりますが8〜12週間の固定が必要です。
◆運動療法
固定期間中は手指の運動を積極的に行い、手根骨の骨萎縮を防ぎ、循環の改善を図ります。
固定除去後は理学療法などを行い、早期機能回復を図ります。
5ー3.手術療法
◆内固定術
骨折部に圧着力をかけることが出来るスクリューなどを用い内固定術を行います。
内固定術を行うと治療期間を短縮することができ、日常生活の制限を最小限にとどめることが出来ます。
◆骨移植
骨が癒合しない場合や骨片が壊死していると疑われる場合には、骨移植術を行います。
移植する骨は、腰から採取することが多いです。
他にも橈骨や中手骨などがあり、細い動脈をつけたまま移植する血管柄付き骨移植を行うことがあります。
骨移植後は、4~6週のギプス固定が必要です。
6.舟状骨骨折の鑑別疾患・合併症
手をついて転倒した時に起こる疾患は多く、鑑別が困難なので、圧痛部位の確認が大切です。
◆手関節捻挫
腫れも軽度な事が多いため、単なる捻挫と間違いやすく圧痛部位の確認が大切です。
手をついた時の痛みがひかない場合は、骨折を疑います。
◆月状骨脱臼
手根骨の月状骨が、手をつき転倒した際に脱臼します。
◆橈骨遠位端部骨折、脱臼骨折
手をつき転倒した時に受傷しやすく、頻度の高い骨折です。
◆尺骨遠位端部骨折
尺骨の遠位端部にある尺骨茎状突起が、手をついた際に骨折します。
◆第1中手骨基底部の骨折(ベネット骨折)
母指の中手手根関節部の脱臼骨折で、親指の指先から付け根に、外力が加わることより受傷します。
7.舟状骨骨折の予後と後遺症
受傷時に骨折を見逃され、適切な治療が行わなければ偽関節を生じやすく、手関節の可動域制限や痛みを残す事があります。
偽関節例では、手根不安定症や変形性手関節症を生じることもあります。
長期間ギプスで固定するので、固定除去後のリハビリが大切です。
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