１.コーレス骨折とは

手のひらをついて転倒した際に、橈骨遠位端部（手関節に近い部分）が折れる骨折です。

全骨折の約１割を占め骨折の頻度が高く、小児から高齢者にいたる幅広い年齢層に発生します。

比較的高齢者の方が発生頻度は高いです。

橈骨遠位端部骨折は、受傷時の手のつき方により、伸展型（コーレス骨折）屈曲型（スミス骨折）に分類されます。

小児は、完全に折れていない若木骨折（若い木の枝を曲げたような状態）や竹節状骨折（竹節の様に骨が膨らんだ状態）などが多く、ときに骨端線離開が発生します。

高齢者は多発骨折や粉砕骨折が多く、６０歳以上の女性では、骨粗鬆症が基盤にあるため発生しやすいです。

骨折片の転位が高度になると、フォーク状変形や銃剣状変形を呈します。

小児の若木骨折の場合は、変形や腫れが軽度な事が多いです。

適切な処置をしないと変形癒合し、手関節の痛みや可動域制限を残す事があります。

 

２.コーレス骨折の症状

◆激しい痛み

受傷後すぐに痛みが出現し、骨折部に沿った痛みや運動時痛がでます。

◆激しい腫れ

前腕遠位部（手関節に近い部分）や手関節にかけて激しい腫れがみられます。

受傷後数時間後には、手指にまで腫れが出現します。

◆可動域制限

痛みのために物を掴んだり、指先で摘むなどの手関節の動きが制限されます。

◆前腕部の変形

手の甲が膨らんで見え、骨折片の転位方向により、フォーク状変形や銃剣状変形が見られます。

【引用文献：柔道整復学・理論編　改訂第５版】

◆手部のしびれ

骨折片や腫れが神経を圧迫し、指がしびれることもあります。

 

３.コーレス骨折の原因

手のひらをついてコケた時や、バイクや自転車を乗っている時に転倒し受傷する事が多いです。

手をついた際に、手が固定された状態で、前腕部に内回りの捻転力が加わり骨折するといわれています。

手の甲をついて転倒した場合は、橈骨遠位端部に屈曲力が加わり、スミス骨折（逆コーレス骨折）となります。

【引用文献：柔道整復学・理論編　改訂第５版】

４.コーレス骨折の検査と診断

４ー１.触診

圧痛部位や転位の有無を確認します。

小児や転位がない場合は、手関節捻挫と間違えやすいので注意が必要です。

また正中、橈骨、尺骨神経損傷も合併しやすいため、神経学的所見の確認が必要です。

４ー２.画像検査

レントゲンで骨折の有無や他の骨折を検査します。

骨の折れ方で治療法が異なります。

折れた部分の骨折線が一本だけか、粉砕骨折などの不安定な骨折か、骨折線が手首の関節内に及んでいるかを見極めます。

CT検査ではレントゲンでは分かりにくい、関節内の骨折の転位を確認することも可能であり、重要な検査となります。

レントゲン、CTで診断し、手術が必要か、ギプス固定で治療出来るかを判断する要素となります。

 

５.コーレス骨折の一般的な治療

転位が軽度のもの、転位がありながらも良い整復位が得られるものは、徒手整復後ギプス固定します。

粉砕骨折や脱臼骨折、徒手整復しても良い整復位が得られない場合などは、手術の適応です。

５ー１.骨折の整復

・徒手整復

患者を仰向きで寝かせ、助手が親指と人差し指から小指を掴みます。

掴んだ手を末梢方向に牽引し、術者が遠位骨片を掌尺側に向けて圧迫します。

この位置を保ちながら上腕から手関節までのギプス固定を行います。

また、レントゲン室で骨が見れるテレビモニターを確認しながら、手関節最大掌屈、尺屈、前腕骨回内位に徒手整復をする方法もあります。

・フィンガートラップ牽引整復法

指にサックをつけ、上から吊るすようにし垂直に牽引します。

２０分ほど牽引し、筋緊張が緩和すれば腕の重みだけで、良好な整復位が得られます。

また、腕に重りをつけて上下に引っ張り合います。

この時に、術者が折れた骨片を掌側に元に戻すように圧迫し整復する方法です。

５ー２.保存療法

◆固定

肘関節９０度屈曲位、前腕回内位、手関節軽度掌尺屈位にて、上腕遠位から手関節までギプス固定を行います。

この肢位での固定は、長くても３週間までとし、２週間を過ぎれば徐々に良肢位（日常動作に不自由の少ない肢位）に近づけます。

◆運動療法

指の運動は拘縮予防のため翌日から開始し、循環の改善を図ります。

４～５週間で固定を外し、徐々に手関節の運動を始めます。

高齢者の場合は、肩や肘関節に拘縮を残す事が多いので、積極的に運動を行います。

５ー３.手術療法

転位が大きい場合や整復位が保持出来ない場合は、プレートや数本のスクリューを用い固定します。

 

６.コーレス骨折の合併症

手をつき転倒した際に起こる疾患は多く、下記の疾患を合併する事もあります。

◆尺骨茎状突起骨折

前腕の尺骨の手関節に近い部位の突起部の骨折で、合併する確率が1番高いです。

◆手根骨骨折（舟状骨）

手をつき受傷する事が多く、見逃しやすいので、圧痛部位の確認が大切です。

◆正中、橈骨、尺骨神経損傷

骨折片や腫れにより、神経を損傷し指先にしびれが出る事もあります。

正中神経麻痺（手根管症候群）を合併する事が多いです。

橈骨神経麻痺はこちらから

◆尺骨突き上げ症候群

橈骨が短縮し、尺骨が月状骨や三角骨などの尺側手根骨を突き上げ、手関節の動きに痛みがでます。

 

７.コーレス骨折と間違いやすい疾患

◆手関節捻挫

転位がなく、腫れも軽度な場合は単なる捻挫と間違いやすいです。

特に小児の若木骨折の場合は腫れも軽度で、鑑別が必要です。

 

８.コーレス骨折の予後と後遺症

転位が少なく、良好な整復位を保持出来れば予後は良好です。

転位が大きく、整復位保持が困難な場合は、手関節の可動域制限が残ったりと予後は悪いです。

特に高齢者は固定により、肩や肘関節の拘縮を起こしてしまう事が多いので、積極的に運動を行い、拘縮を防ぐ事が大切です。

骨折を放置し整復せずに、変形などを残した場合は、手関節の運動時に痛みが出たりします。

場合により矯正手術が必要となるので、早期の正しい整復保持が大切です。

また、骨折後のリハビリによって手指の関節の拘縮を防ぐ事が出来るので、リハビリが重要となります。

 

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