痛み, 膝の痛み
10.172017
膝の痛みとガクっとなる【前十字靭帯損傷】の症状・原因・治療まとめ
1.前十字靭帯損傷について
多くはスポーツによるもので、受傷直後は膝の激しい痛みや、痛みによって膝が動かせなくなります。
コンタクトスポーツやジャンプ、急な方向転換をした際に受傷することが多いです。
前十字靭帯は膝の関節内にある靭帯のため血流が乏しいです。
そのため自然治癒が望みにくいため手術適応となりやすいです。
小児の場合では、外力に対して骨が弱いため、「顆間隆起骨折」という前十字靭帯の付着部が牽引力により裂離されることもあります。
本疾患は受傷機転から、前十字靭帯のみならず内側側副靱帯の損傷や内側半月板の損傷を伴うこともあります。
これら三つの損傷をまとめて「不幸の三徴候」と呼ばれています。
2.前十字靭帯損傷の症状
◆断裂音
受傷時に靭帯が断裂する「ブツッ」といった音(POP音)が認められることがあります。
◆痛み
受傷直後は激しい痛みがあります。
運動中の受傷では継続が困難となります。
◆腫れ
関節周囲に高度の腫れが認められます。
◆可動域制限
腫れや激しい痛みにより膝を動かせなくなります。
歩行はかろうじて可能となることが多いです。
◆不安定感
初期には腫れや痛みが強いため動かせなくなります。
2.3日経過すると腫れが徐々にひいてくるため不安定感が顕著となります。
軽度の場合では不安定感がないこともあります。
◆膝崩れ(Giving way)
歩行時や荷重をかけた際に膝がガクッと力が抜けるような症状を膝崩れといいます。
初期には歩行が困難なため起こりにくいですが、痛みや腫れが治まってくると、膝崩れが起こります。
3.前十字靭帯について
大腿骨と脛骨を繋ぐ靱帯です。
関節内にあるため、血流が乏しく自然治癒があまり望めません。
◆靭帯の走行と役割
・走行
大腿骨外側顆の顆間窩面後方から起こる
脛骨の顆間隆起前方に付着する。
・役割
機能的に2束分けられ、前内側線維と後外側線維からなります。
主な役割として、
◇大腿骨に対して脛骨が前方に移動するのを制御する
◇大腿骨に対して脛骨が内旋するのを制御する
などがあります。
4.前十字靭帯損傷の原因
足のつま先に対し、膝が内側に入るような動作を行うと前十字靭帯が損傷を受け、部分断裂や完全断裂などが起こります。
主な動作として、
・ジャンプの着地
・急な方向転換
・ストップ動作
・膝上へのタックル
などで受傷します。
◆前十字靭帯損傷の多いスポーツ一覧
・サッカー
・ラグビー
・アメフト
・バレー
・バスケットボール
・柔道
・スキー
・スノーボード
・格闘技
などの急な方向転換やジャンプなどを要求されるスポーツや接触の多いスポーツに好発します。
◆靭帯の程度による分類
第Ⅰ度 | 靭帯線維の微小損傷であり、疼痛、腫脹(出血)も少なく、圧痛、機能障害も軽く、不安定性は認められない |
第Ⅱ度 | 靭帯の部分断裂であり、不安定性が軽度から中等度にみられ、機能障害もみられる |
第Ⅲ度 | 靭帯の完全断裂であり、関節の不安定性が著明にみられ、機能障害も高度である。 関節形態や外力の種類にもよるが、靭帯の完全断裂が発生すればおのずと脱臼にいたることもある (肩鎖関節における肩鎖靭帯ならびに烏口鎖骨靭帯断裂) |
5.前十字靭帯損傷の検査と診断
◆徒手検査
・ラックマン(Lachman)テスト
膝を軽く曲げて、大腿部と脛骨部を持ち、脛骨を前方に引き出します。
健側と比べて動揺性が強い場合は陽性となります。
・前方引き出しテスト
背臥位にて膝を曲げて、足部を殿部で押さえ固定します。
その状態で脛骨を前方に引き出します。
5mm・5~10mm・10mm以上をおおまかな指標とします。
・Nテスト
患者さんの足部を持ち大腿を内旋し、軸方向に力を加えます。
大腿部の手で腓骨頭を押しながら膝を伸ばしていくと脛骨が瞬間的に亜脱臼を起こします。
同時に患者さんが不安感を訴えます。
この現象を陽性とします。
◆画像検査
レントゲンでは骨折の有無を確認します。
MRIでは靭帯の損傷程度や他の骨・軟部組織損傷の有無を確認します。
◆関節鏡検査
主に手術で使用されますが、靭帯の損傷程度や半月板や軟骨損傷の有無を確認します。
6.前十字靭帯損傷の一般的な治療
◆保存療法
一般的に運動量の少ない中高年や、損傷が軽度で不安定感などの症状がない場合は保存療法となることがあります。
また本人が許容できる範囲内であれば保存療法が選択されます。
・安静
運動の中止や免荷を行い膝を安静に保ちます。
・固定
ギプス固定や装具を用いて膝を固定し松葉づえで体重をかけないようにします。
・アイシング
初期では膝の周囲を冷やします。
・物理療法
低周波・温熱などを用いて、膝の周囲にある筋肉の緊張取り除きます。
・運動療法
固定中や固定後、術後は筋力が落ちているため筋力のトレーニングを行います。
主に、
膝の屈伸訓練
可動域を徐々に増やす
歩行訓練
などを行います。
◆手術療法
スポーツ頻度の高いアスリートや若年者、スポーツ愛好家や受傷後経過を見て膝崩れなどを繰り返している場合は手術を選択する場合があります。
・靭帯再建術
自家腱の移植を行う方法と人工靭帯で行う場合があります。
自家腱を用いる場合では、膝屈筋腱・半腱様筋腱・薄筋腱を移植します。
異物反応や免疫反応を起こす心配がないため基本的な移植材料となります。
7.前十字靭帯損傷の鑑別
◆内側側副靱帯損傷
膝の内側付着する靭帯の損傷です。
前十字靭帯損傷と同じような受傷機転のため鑑別が必要です。
前十字靭帯・内側側副靱帯・内側半月板損傷を合わせて「不幸の三徴候」といいます。
◆内側半月板損傷
関節内の内側にある軟骨組織の損傷をいいます。
前十字靭帯と同じような受傷機転となります。
前十字靭帯・内側側副靱帯・内側半月板損傷を合わせて「不幸の三徴候」といいます。
◆顆間隆起骨折
前十字靭帯が付着する部の裂離骨折です。
小児では骨がまだ未成熟のため、靭帯損傷より骨折になりやすいです。
8.前十字靭帯損傷の予後と後遺症
保存療法の場合、靭帯の自然治癒が望めないため、不安定感や膝崩れなどの症状が残る場合があります。
しかし運動量が少なく、高度なスポーツをしなければ日常生活に支障をきたすことは少ないです。
手術をした場合スポーツ選手なら6ヶ月~1年で復帰可能となります。
前十字靭帯損傷では、痛みが2.3日をピークに徐々に治まり歩行も可能となってくるため、放置されることもあります。
しかし不安定性が残り、膝崩れによる半月板損傷や変形性膝関節症となるため受傷時は早期に医療機関を受診してください。
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