手の痛み, 指の痛み, 痛み, 神経障害, 肩の痛み, 首の痛み

若い女性の手、腕、肩の痛みと痺れ【斜角筋症候群】症状・原因・治療まとめ

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1.斜角筋症候群について

【標準整形外科学より】

 

斜角筋は、首の骨(頸椎)から第1肋骨、第2肋骨にかけて付いている筋肉です。

首の前側から、下記の3つがあります。
①前斜角筋
②中斜角筋
③後斜角筋

このうち前の方にある前斜角筋と中斜角筋の間には、
④腕神経叢、⑤鎖骨下動脈という腕に向かう神経の束と血管が通っています。

 

斜角筋症候群とは、その前斜角筋、中斜角筋が何らかの原因で緊張し、神経や血管を挟み込み圧迫することで起こります。

症状は
◆手や指、腕のしびれ
◆熱感、冷感
◆脱力感
◆頚・肩・肩甲骨間・前胸部の痛みや不快感
◆腕の血行が悪くなり腕が青白くなる
◆痛み
などが見られます。

多くの場合ははっきりとした原因が不明な事が多いとされています。
一般的な治療には安静、理学療法や運動、消炎鎮痛剤などがあります。

首から鎖骨、第一肋骨辺りの胸の上部の部分で神経や血管が圧迫される症状は、その場所によって
◆斜角筋症候群
◆肋鎖症候群
◆過外転症候群
と呼ばれていて、まとめて「胸郭出口症候群」と言われます。
斜角筋症候群は胸郭出口症候群の中のひとつです。

首が長い、なで肩の女性に多く、20歳代がピークとされています。

 

2.斜角筋症候群の症状

様々な症状が出ますが、大きく分けると神経型、動脈型に分かれます。

2-1.神経型の症状

神経が挟み込まれて圧迫される事で起こる症状です。
一般的には首や肩の辺りの症状から始まり、腕や手、指の方に広がるとされています。

◇首や肩、肩甲骨の間、胸の前上部辺り(前胸部)の痛み、うずくような不快感

◇手や指、腕のしびれ、なまったような感じ

◇手指、腕に熱感(熱い感じ)や冷感(冷たい感じ)がある

◇脱力感

初めは物を持ち上げたり家事をしたりなど労作時に症状が出ますが、次第に何もしなくても常に症状を感じるようになります。

 

2-2.動脈型の症状

鎖骨下動脈が圧迫される事で血液が流れにくくなることで起こる症状です。

◇手や肩、指のむくみ

◇色が青白くなる

◇痛み

冷たい場所に行くと、指が青白くなりしびれを感じる事もある「レイノー症候群」と呼ばれる症状が出る場合もあります。

 

3.斜角筋症候群の原因

多くの場合は正確な原因は不明である事が多いとされています。

その中でも

◇頚肋(けいろく)

まれに第7頸椎に出来る肋骨状の骨で、血管や神経、筋肉などを圧迫する

◇第一肋骨の異常

本来ないはずの肋骨がある、肋骨の位置の異常、肋骨の動きを障害する理由がある場合

◇頸椎の異常

本来ないはずの余分な骨がある、頸椎の変形、位置の異常など

◇鎖骨骨折の後に変形して治癒したもの

◇ストレス、姿勢不良

精神的緊張や同じ方を向く動作、ごろ寝でテレビを見る、高すぎる枕などが原因で斜角筋が緊張している場合

などが原因になる場合もあるとされています。

 

4.斜角筋症候群の検査と診断

 

4-1.問診

自覚症状と経過、症状の出ている部位などから推定が可能とされています

 

4-2.徒手検査

4-2-1.モーレイテスト

鎖骨上窩を指で圧迫すると圧痛、放散痛が生じると陽性の可能性あり

 

4-2-2.アドソンテスト

痛みがある側に頭を回旋させて、顎を挙げた姿勢で深呼吸をする。
その時橈骨動脈の脈拍が感じられなくなると陽性の可能性あり

 

4-3.神経伝導検査

末梢神経に異常がないかを調べるために行われる場合もあります

 

4-4.筋電図検査

筋肉に異常がないかを調べるために行われる場合もあります

 

4-5.首のX線検査

頸椎に余分な肋骨が出来ていないか、変形の有無などを確認します

 

4-6.血管造影検査

血流の異常の確認のため、腕の動脈の血管造影を行う場合もあります

 

4-7.MRI検査

解剖学的な異常を確認するために行う場合もあります

 

4-7.聴診

鎖骨の上やわき(腋窩の頂点)に聴診器を当て聴診します。
何かに障害されて血流が悪くなっていると雑音が聞こえるため、確認する場合もあります

 

5.斜角筋症候群の一般的な治療

 

5-1.安静

症状が悪化するような日常生活での動作を控えるように指導します。

5-2.理学療法と運動

温熱、電気、光線、運動など

5-3.消炎鎮痛剤

痛みを緩和するために用いられます

5-4.手術

・鎖骨下動脈の閉塞
・頚肋があるなどの解剖学的に異常がある場合
・症状が進行する場合
などには頚肋摘出術、前斜角筋切断術などの手術も検討されます。
しかし、手術をしても症状が消えない場合も多いとされています。

 

6.斜角筋症候群と間違いやすい疾患

6-1.手根管症候群

正中神経が手首の手根管という部分で絞扼(しめつけられる)ことで起こります。
初期に親指、人差し指、中指辺りにしびれ、痛みを感じます。
進行すると親指の付け根のふくらみが痩せてきます。

6-2.肘部管症候群

尺骨神経が肘の内側で圧迫されたり牽引されることで起こります。
初期に小指と薬指の小指側にしびれを感じ、進行すると筋肉の委縮(衰え)、変形が起こります。

6-3.尺骨管症候群

手首の小指側の尺骨管という部分で尺骨神経が圧迫されることで小指と薬指の小指側にしびれや痛みが生じます。

6-4.パンコースト腫瘍

肺尖部(肺の頂上)にできるがんです。
がんが胸璧に達した場合などに首から腕に向かう神経を侵し、初期には腕の内側の痛みやしびれなどを感じる場合があります。

6-5.頸椎症・頸部神経根症

頸椎(首の骨)に骨棘と言われるトゲができたり、椎間板ヘルニアが起きるなど、頚椎の変性によって神経根が圧迫されることによって起こります。
首や肩、腕にかけて痛みやしびれ、脱力感を感じます。

6-6.脊髄損傷

頸椎の骨折や脱臼などによって、脊髄が圧迫され運動、知覚の障害が出ます。
完全麻痺では四肢が動かなくなり、感覚がなくなります。
骨折や脱臼がなくても、もともと頸椎症や脊柱管狭窄がある人が道で転ぶといった衝撃でも起こり得ます。

6-7.腱板断裂

肩の腱板と言われる部分が断裂、部分断裂することによって起こります。
肩が上がらない、痛み、夜間痛(寝ている間の痛み)があります。

6-8.脊髄空洞症

脊髄の中に脳脊髄液のたまった空洞ができ、それが内側から脊髄を圧迫するため様々な神経症状が出る疾患です。
難病指定されています。

6-9.腕神経叢腫瘍

首の部分から出て腕に向かう神経の集まったものを腕神経叢と言います。
その腕神経叢に腫瘍ができるために起こります。

6-10.脊髄腫瘍

腫瘍ができることで、脊髄やそこから出る神経が圧迫されることで起こります。

 

7.斜角筋症候群の予後と後遺症

手術は確定診断が難しいこと、手術をしても症状が消えない事が多いことなどから、なるべく行わないとされています。

 

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