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【腰痛】 あぐらがかけない プチ講義

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私は専門学校の教員であり、当治療所では研修生を指導しています。

「あぐらがかけない」患者さんについて、質問があったので追記してみます。

興味があれば別ですが、医療関係者向きですので一般の方はスルーして下さい。

私がどのように考え、治療を進めるのか、知りたい人にはいいかもしれません。

 

治療の基本

前回、腰痛、肩痛、膝痛などの運動器系の症状は、「目に見えるので解りやすく、治療が易しい」と書きました。

それは、どうしてかというと、

「現象を観察→仮説→実験→検証」

という作業がしやすいからです。

現象を観察し、法則性を見出し、仮説を立てます。

そして、その仮説が正しい事を確認する実験方法を考案します。

そして、実験(つまり治療)して、結果が予想通りであれば、仮説は一定の信頼性を持つでしょう。

治療、診断、評価とは、本来こういうモノです。

ただ、知識を覚えてそれを実行するモノではありません。

それでは、知らない、診たことがない、経験のない、本に書いてない、習っていないなどの症状に対応出来ません。

難治性症状の治療の開発もこの基本の延長にあります。

 

それは何故か?

このように書くとなんだか難しく感じますが、要は小学校の理科の実験と同じレベルです。

具体的には、「『あぐらがかけない』のは何故か?」と考えます。

鍼灸師なら解剖学と経筋で考えると良いでしょう。柔整師ならば、運動学で考えれば良いです。

さて、何が考えられますか?

「あぐら」と言う肢位は、股関節は【屈曲・外転・外旋】ですね。

それが「出来ない」と言うことはどういう事ですか?

どういう事が考えられますか?

もちろん沢山のことが考えられます。

筋、骨、靱帯、関節と順番に整理して考えられることを全て思い描いて下さい。

それが出来たら、次にそれを支持する所見を考えてみて下さい。

例えば、【屈曲・外転・外旋】筋群の拮抗筋、つまり、【伸展・内転・内旋】筋群が何らかの理由で短縮、または緊張していたらどうでしょう?

あぐらをかこうとしたら患者さんは何と訴えるでしょう?

そしてどんなテストが陽性になり、どんな所見がみられるでしょう?

どうすれば証明出来ますか?

関節包や靱帯の拘縮なら?関節強直なら?などなど…全て考えて下さい。

長くなるので個々の例は省略しますが、考えられる限り考えて下さい。

組織別に解剖・生理・病理で整理して下さい。

 

局所以外の原因の場合

さて、ここまでは、局所的原因(股関節に原因がある)で「あぐらがかけない」ケースのパターンでした。

 

しかし、ぶっちゃけ、当治療所まで来院される患者さんは、局所的原因でカタが付く事は滅多にありません。

この場合だと、股関節にはほとんど問題が無かったり。

じゃあ、次は、股関節に強調すべき原因が見当たらないときはどう考えるか?

 

もう一回「あぐら」という肢位を見て下さい。

「あぐら」は【膝】が完全に近く屈曲してますよね?

今回の患者さんはあまり関係ありませんでしたが、例えば、膝がきちんと曲がらない為に「『あぐら』がしにくい」というケースは考えられませんか?

膝関節の運動に関わる筋群は股関節の運動を司る筋群と、その多くが共有していますよね。

となれば、膝の既往歴を確認し、診察しなければなりません。

 

さて、膝も考えた。他には何があるでしょう?

「あぐら」の肢位で股関節を開いたり閉じたりしてみて下さい。

ほら、解りませんか?骨盤帯、腸骨と仙骨、あと脊柱が連動するでしょう?

と言うことは、それらのどこか、または複数が何らかの理由で動きを制限されていれば、股関節の運動の影響が出ると言うことです。

あとはそれを確認する方法を考え、治療すれば良いのです。

 

あと、今回のケースで最も大きな、70%ほどの責任があったのは肩甲帯でした。

肩甲帯は四つんばいで歩く時の腸骨との連携を考えれば、股関節の運動に対する影響は解るでしょう。

実際、患者さん本人は言ってなかった右肩の可動域に問題がある事が確認出来ました。

治療後の写真は、右肩を治療した後です。腰痛もここで消失しました。

 治療前

 治療後

 

終わりに

我々、鍼灸師、柔整師は、国家資格でありながら、歴史的経緯から病院システムの枠外にあります。

そのため、医師のように大学病院などの研究機関が無いため、エビデンスの高い新治療の提供がありません。

(最近こそ関係者の努力で大学がいくつか設立されましたが、まだまだわずかなものです。)

ですから、既存の治療法を覚えて、その診断基準に当てはめて施術しているだけでは、患者さんの高度なニーズに応えることは出来ません。

いきおい「慰安」に走ってしまう気持ちも理解できなくはありません。

しかし、それでは未来は決して明るいものではないことは皆さんが気づいていることでしょう。

それを克服するには、解剖学、生理学、病理学、運動学、臓腑経絡学などの基本的知識で、一つ一つ自ら観察・実験・検証を繰り返す必要があります。

それは、地道な作業ですし、大変なことです。

しかし、はじめに「難治性症状の治療の開発もこの基本の延長にあります。」と書いたように、患者さん一人一人の訴えに真摯に向き合い、「何とかしてあげたい」という気持ちで寝る間も惜しんで頑張り続ければ、気づけば誰も知らないあなただけの治療法と多くの患者さんの笑顔を得ていることでしょう。

私も道半ばですが、ともに頑張りましょう。

 

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