痛み, 膝の痛み
4.32018
スポーツ少年に多い膝の前の痛み【脛骨粗面骨折】症状・原因・治療まとめ
1.脛骨粗面骨折とは
大腿四頭筋の牽引力により膝蓋靱帯の付着部である脛骨粗面部が裂離し、骨折することを脛骨粗面骨折と言います。
骨形成が未熟な13歳から18歳の男子に多く、比較的稀な疾患です。
骨化が完了する18歳以降では発症しにくいです。
・原因
主に陸上競技や体操などのジャンプ動作を行うスポーツに多いです。
骨化が進んでいない、脆弱な脛骨粗面部にジャンプなどの牽引力がかかる事により受傷しやすいです。
・症状
膝関節を伸ばせなくなり、脛骨粗面部の腫れや痛み、骨折部に一致した痛みを伴います。
骨折の程度により脛骨粗面の膨隆や骨片の異常可動性などが見られます。
・治療
軽度な転位の場合は、保存療法を選択します。
膝関節伸展位で大腿中央から、中足趾節関節手前まで副子固定を行います。
転位が高度の場合は手術の適応です。
・後遺症
予後は比較的良好で、適切な処置をすれば後遺症を残すことはあまりないです。
転位が大きく整復位が得られらない場合は、脛骨粗面部の膨隆などの変形を生じることもあります。
2.脛骨粗面骨折の症状
◆激しい痛み
骨折部周囲に激しい痛みが出ます。
脛骨粗面部の圧痛や歩行時の痛みが出現します。
◆激しい腫れ
骨折の際に起こる出血によって骨折部に血がたまり、血腫を形成する為、膝下が腫れます。
また骨折の程度によっては膝が突出したように見えます。
◆可動域制限
痛みのために膝関節屈曲制限がみられます。
膝関節の自動伸展が不能になります。
3.脛骨粗面骨折の原因
ざらざらした粗い表面をしていることから粗面と呼ばれ、そこには大腿四頭筋が付着しています。
大腿四頭筋の収縮により、脛骨粗面部が裂離し骨折します。
骨形成が未熟な13歳から18歳の男子に多く、骨化が完了していないので、筋力によって裂離骨折しやすいです。
膝屈筋群の柔軟性の低下や膝蓋骨低位なども発生要因としてあげられています。
スポーツ中での受傷が多く、踏み切りまたはジャンプの着地で発生します。
◆脛骨粗面骨折の起こしやすいスポーツ一覧
・陸上競技(幅跳びや高跳び)
・バスケ
・バレー
・サッカー
・野球
4.脛骨粗面骨折の分類
骨折部の程度による分類をワトソンジョーンズ分類と呼びます。
重症度に応じて三つに分類されます。
1型 骨端核のみの裂離
2型 脛骨近位端部の一部が裂離するが連続性を持つもの
3型 完全に裂離し関節内に骨折線がみられる
引用文献:柔道整復学・理論編 改訂第5版
◆小児における骨折の分類
小児の骨折では、重症度により分類が分かれます。
本疾患ではソルタ-ハリスの分類、type3型に当てはまります。
引用文献:標準整形外科学 第12版
TypeⅠ
骨端と骨幹端が完全に分離しますが骨折は伴いません。
幼小児に多く、成長障害を残すこともありません。
TypeⅡ
最も頻度の多い型です。成長軟骨板の分離と三角骨片を伴います。
年長児に多く整復も容易で成長障害を残すこともありません。
TypeⅢ
Ⅱ型と逆で、骨端部に骨片を伴い、関節内に骨折線が及ぶ稀な損傷です。
関節面の整復を正確に行えば成長障害を残すことは稀です。
TypeⅣ
関節面から成長軟骨板を越えて骨幹端に至り、縦に骨折線が走ります。
手術にて関節面と成長軟骨板を整復し固定します。
完全な整復が得られない場合は予後が不良となります。
TypeⅤ
長軸方向の外力により成長軟骨板が圧挫します。
膝や足関節に起こりやすいです。
転位がないため受傷直後は診断が困難で、圧挫された成長軟骨板は早期に閉鎖し、成長障害や変形を生じ予後は最も不良となります。
4.脛骨粗面骨折の検査と診断
4-1.視診・触診
受傷時の状況や年齢を問診し、他の骨折の有無を触診します。
脛骨粗面部の圧痛部位や膝の屈伸運動を確認します。
4-2.画像検査
レントゲンで骨折を判断します。
レントゲン撮影で骨折線が確認されない事もあるので、痛みが長く続けばMRI検査を行います。
5.脛骨粗面骨折の一般的な治療
転位が少なく、膝を伸ばす事が可能であれば保存的に整復、固定を行います。
転位が大きく、骨片が大きいものは手術による整復固定となります。
5-1.保存的療法
◆整復
膝関節伸展位で大腿四頭筋を弛緩させ、骨片を下方に圧迫し整復します。
◆固定
膝関節伸展位で大腿中央から、中足趾節関節手前まで副子固定を行い、脛骨粗面部に圧迫包帯を行います。
脛骨粗面に負荷をかけないように安静にすることが必要です。
◆物理療法
低周波・温熱などの機器を用いて筋の弛緩を促します。
◆ストレッチ
炎症が強い初期にはストレッチはしません。
主に予防として太ももの前にある筋肉(大腿四頭筋)を伸ばします。
5-2.手術療法
転位が高度の場合はスクリューで骨片を固定する手術を行います。
6.脛骨粗面骨折の鑑別疾患
◆ オスグット・シュラッター病
大腿四頭筋の牽引力により、脛骨粗面部に繰り返しの小外傷が加わります。
その繰り返しの外力により、付着部の炎症、膨隆を起こした状態を言います。
発症年齢は10歳から15歳の活発な男子に多い傾向にあります。
脛骨粗面骨折も膝伸展機構に負荷がかかり生じます。
特に軽度の転位や裂離骨片が小さい場合は注意が必要です。
※膝伸展機構とは、大腿四頭筋四頭筋→筋腱→膝蓋骨→膝蓋靭帯→脛骨粗面より構成され、膝を伸ばす時に使われる筋肉や腱、靭帯を言います。
◆膝蓋骨骨折
スポーツ時に大腿四頭筋の牽引力で骨折する事もあるため、圧痛部位の確認が必要です。
7.脛骨粗面骨折の予後と後遺症
一般的に早期に治療すれば良好な予後と言われています。
しかし関節内に骨折が及んでいたり安定した整復固定が得られない場合、脛骨近位が変形し、膝関節機能に障害が残ることもあります。
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