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手に力が入らない【橈骨神経麻痺】の症状・原因・治療まとめ

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1.橈骨神経麻痺とは

何らかの原因で、橈骨神経の損傷・断裂が起き、麻痺することを「橈骨神経麻痺」と言います。
損傷を受けると、神経支配領域での運動障害や感覚障害が起こります。

 

2.橈骨神経について

上肢で最も大きい神経で、上腕・前腕・指の筋や皮膚に分布します。

神経は基本、運動線維と感覚線維に分かれます。
運動線維は筋肉の運動を司り、中枢から末梢へ信号が送られます。
感覚線維は皮膚の感覚などを伝えるため、末梢から中枢へ信号が送られます。。

 

◆橈骨神経の走行

橈骨神経は脊髄神経のC5(第5頚神経)~C8(第8頚神経)・T1(第1胸神経)から出ます。
次いで腕神経叢(首の前)にある後神経束の続き、橈骨神経へと続きます。

 

・上腕部

おおまかな走行は首から腋窩→上腕の後面→肘の外側へ、らせん状に下行していきます。

 

運動線維
上腕では上腕後面にある上腕三頭筋の運動を支配します。

 

感覚線維
上腕上部では後側(後上腕皮神経)の皮膚へ分布します。
上腕中部では下外側(下外側上腕皮神経)の皮膚へ分布します。
上腕下部では前腕後面(後前腕神経)の皮膚へ分布します。

 

・前腕部

前腕では肘窩の外側で浅枝と深枝に分かれます。

浅枝は主に感覚線維からなり、深枝は運動線維からなります。

 

運動線維(深枝)
橈骨神経深枝は後骨間神経と呼ばれます。
深枝は前腕の後側深部(手の甲側)を下行し、前腕の伸筋全て・回外筋を支配します

感覚線維(浅枝)
浅枝は前腕外側を橈骨動脈と下行し、前腕下1/3で手背側に至ります。

 

注:画像では省略している部分もあります。

 

・手部

深枝は前腕で終わり、浅枝が手背に続きます。

感覚線維
手部に達した浅枝は5本の背側指神経となります。
支配領域は母指球外側から手背の2と1/2の背側の皮膚に分布します。

 

◆橈骨神経の役割

・運動線維

上腕と前腕、指の伸筋を支配します。

 

・感覚線維

上腕では後面・下外側の知覚、前腕では後外側、手部では母指球(親指の付け根)外側から手背2と1/2の近くを支配しています。

 

3.橈骨神経麻痺の症状

主に運動障害と感覚障害がみられます。
損傷を受ける部位によって運動障害や感覚障害の程度や範囲が大きく異なります。

 

◆運動障害

・下垂手(drop hand)
下垂手とは手首や指の背屈筋や指の伸筋が麻痺するため、手の甲側へ曲げることが出来なくなります。
主に腋窩・上腕部後面・上腕下部での障害により起こります。
上腕部後面が障害されやすいです。

・下垂指(drop finger)
下垂指とは、手首の背屈はできますが、指の伸展が不能となります。
前腕部にある後骨間神経の支配筋の麻痺により起こります。
下垂手との違いは、感覚障害はなく、手首が背屈できます。

 

◆感覚障害

障害の部位により感覚障害の有無が決まります。
前腕部にある橈骨神経の続きである後骨間神経の損傷では感覚障害はでません。
しかし上腕部・前腕外側(親指側)の橈骨神経損傷では感覚障害が伴います。

4.橈骨神経麻痺の原因

主に外傷に伴う神経損傷や外的・内的要因による圧迫が多いです。

夫婦や恋人で腕枕をすることにより橈骨神経麻痺が起こることから、別名「ハネムーン麻痺」と呼ばれることもあります。
他にも「サタデーナイトパラリシス」「ラバーズパラリシス」とも呼ばれます。
パラリシスは麻痺という意味です。

◆創傷によるもの

神経の走行上損傷を受けやすいです。
刃物による傷で神経が断裂することもあります。

 

◆上腕骨・前腕骨(橈骨・尺骨)の骨折・脱臼に伴う神経損傷

転倒した際などに上腕骨・前腕骨の脱臼または骨折が起こり、骨折端部が神経を傷つけてしまいます。
モンテギア骨折や上腕骨顆上骨折によるものが多いです。

 

◆打撲などによるもの

コンタクトスポーツや球技で、直接神経を損傷する場合もあります。

 

◆長時間の圧迫によるもの

うたた寝や深酒により神経が圧迫された状態で寝てしまい損傷を受けます。
子どもに腕枕をしていて、というものもあります。
上腕骨の後部での圧迫が多いです。

後骨間神経は肘外側でフローセの腱弓というトンネルをくぐり前腕部を下行します。
このトンネルは筋肉などで囲まれているため使いすぎにより筋肉の緊張度があがると圧迫を受けることがあります。
しかし前述したとおり後骨間神経麻痺は感覚障害、手首の背屈(手背側に曲げる)ことは可能なため鑑別は容易です。

 

◆ガングリオンや脂肪腫による圧迫

ガングリオンとはゼリー状のものが詰まった米粒大の塊です。
脂肪腫とは脂肪組織からなる瘤(こぶ)です。
これらが橈骨神経の走行上付近にでき、圧迫を受けることによって神経障害が起こります。

 

5.橈骨神経麻痺の診断と検査

◆チネル兆候

神経障害部を叩くとその支配領域に痛みが放散します。
これをチネル徴候と言います。
この検査により神経損傷が起こっている部位や神経の治癒経過を知ることができます。

 

◆運動障害の程度

神経の損傷部位により麻痺される筋肉が異なります。
それにより下垂手・下垂手がおこるため神経の損傷部をおおまかに検査できます。

 

◆感覚障害の有無

神経には固有支配領域というものがあります。
特定の神経しか支配していない皮膚領域を目安に、損傷されている神経を検査します。
橈骨神経では、母指球外側から手背の2と1/2が固有神経支配領域です。

後骨間神経は純粋な運動線維で出来ているため感覚障害は起こりません。

 

◆筋電図検査

神経に異常がないか検査します。
筋肉を意識的に動かすには神経からの信号が伝わらなければ筋肉は動きません。
筋電図はその電気信号が伝わっているかどうかを筋肉から調べることが出来ます。

 

◆X線(レントゲン)検査

骨折などがないか検査します。

 

◆MRI検査

神経を画像で映し出すことが出来ます
神経損傷の有無や程度を検査します。

 

◆超音波検査

特殊な音波を用いて神経の状態を映し出します。
運動器では筋肉や骨、腱などの検査にも使えます。

 

6.橈骨神経麻痺の鑑別

特徴的な症状のため鑑別は容易です。
創傷や骨折、脱臼などに伴うものであれば、他の神経損傷の有無や動脈の断裂などの検査も必要です。

 

7.橈骨神経麻痺の一般的な治療

麻痺の程度や原因によりますが、基本は保存療法を行います。
必要であれば手術を行い、並行して保存療法も行います。
三ヶ月ほど経過を見て、回復の見込みがなければ手術となります。

◆保存療法

・安静
神経損傷は外傷に伴うものが多いため初期は安静にします。

 

・固定具
骨折や脱臼などの場合は固定具にて安静位を保ちます。

 

・薬物療法

痛みを抑える薬

神経症状を抑える

などが処方されます。

 

・リハビリ
神経が回復すれば徐々に動きもついてきますが、その間筋肉は長期間動かず、筋肉の萎縮が起こります。
2週間ほどすると拘縮も起こるため、運動療法を行わなければなりません。
拘縮とは関節周囲の組織や筋肉が縮こまってしまい動かなくなります。
一度拘縮すると長期の治療が必要なため、予防が大事になります。

 

◆手術療法

骨折や脱臼、腫瘤による神経麻痺では手術が行われる場合があります。
神経の縫合・移植・剥離などが行われます。

神経の回復が見込めない場合は腱移行手術が行われます。

 

8.橈骨神経麻痺の予後と後遺症

程度にもよりますが、軽度のものなら予後は良好です。
しかし骨折や脱臼、神経の断裂がある場合は長期間の治療が必要です。

神経麻痺に伴う関節周囲の拘縮になると治療は長期間必要になります。

 

9.神経障害の記事

巨人・沢村投手の肩の異和感の顛末に鍼灸師が覚える違和感(長胸神経麻痺)

巨人沢村投手の報道を見て一鍼灸師が感じたもやもや感 まとめ(上記の追記)

 

 

※内容に誤りや情報が古いなどありましたらお手数ですがご一報ください。

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