膝の痛み
10.312017
交通事故で起こる膝関節脱臼の症状・原因・治療まとめ
1.膝関節脱臼について
膝の脱臼は比較的稀ですが、交通事故などの強力な外力によって起こります。
多くは関節面が一部接触した状態の不全脱臼となることが多いです。
症状は激しい痛みと膝関節周囲の腫れ、膝を動かせなくなり歩行が困難となります。
脱臼するには4本の強靭な靭帯のうち3本が断裂し、通常は前後十字靭帯と側副靱帯のどちらかが損傷します。
高度の軟部組織損傷と腓骨及び脛骨神経、膝窩動脈損傷などの重篤な合併症を伴うことが多い疾患です。
膝の靭帯断裂を伴うため、治癒後も膝関節の不安定性や変形などが起こります。
2.膝関節脱臼の症状
◆膝の痛み
脱臼時に膝関節周囲に激しい痛みが起こります。
◆膝周囲の腫れと変形
膝関節周囲の軟部組織損傷が起こり、高度な腫れがあります。
脱臼のために膝は大きく変形します。
◆可動域制限
激しい痛みや脱臼により膝を動かせなくなります。
◆下腿の感覚障害
脱臼時に神経を損傷すると下腿の痺れや感覚麻痺が起こります。
◆下腿の冷感
膝の裏には膝窩動脈が走行しているため前方脱臼や後方脱臼では膝窩動脈の損傷を伴うことがあります。
下腿の冷感が発症し、時間が経過すると下腿への血流が滞るため壊死などを起こすこともあります。
3.膝関節脱臼の原因
◆前方脱臼
引用文献:柔道整復学・理論編 改訂第5版
大腿骨に対して脛骨が前方に脱臼します。
膝が過度に伸ばされることによって受傷します。
他にも脛骨の近位に後方からの外力と大腿骨の遠位に前方から外力が加わり受傷します。
多くは完全脱臼し、膝関節内では最も多い脱臼です。
20%に動脈損傷が合併し、血管損傷の範囲も広範囲となります。
他にも前後十字靭帯損傷が断裂し、同時に側副靱帯損傷も伴います。
総腓骨神経や脛骨神経の損傷も伴います。
◆後方脱臼
引用文献:柔道整復学・理論編 改訂第5版
膝を曲げた状態で脛骨の近位部に前方から外力に加わり発生します。
交通事故での脱臼が多いです。
大腿骨に対して脛骨が後方に転位し、膝が過伸展した状態に変形します。
後十字靭帯損傷や後方の関節包断裂、側副靭帯の損傷を伴います。
血管損傷も生じますが、範囲は限局しています。
神経損傷は、転位した脛骨により神経が引き裂かれます。
◆側方脱臼
引用文献:柔道整復学・理論編 改訂第5版
内方及び外方への脱臼をいいます
足部が固定された状態で膝に内外反力が加わり受傷します。
ほとんどが不全脱臼で、横径の増大がみられます。
片側の側副靱帯損傷と十字靭帯損傷を伴いますが、神経血管損傷は少ないです。
膝蓋骨は脛骨の脱臼方向に随伴します。
外方脱臼では下腿が外旋、内方脱臼では下腿が内旋するします。
◆回旋脱臼
引用文献:柔道整復学・理論編 改訂第5版
稀な脱臼ですが膝が捻転して起こる脱臼です。
断裂した関節包内にボタンホール様に挟まりこんだり、断裂した内側副靱帯が関節内挟まり整復できないことがあります。
十字靭帯や側副靱帯の損傷、半月板の損傷を伴います。
他にも関節包の損傷を伴います。
4.膝関節脱臼の検査と診断
◆触診・視診
脱臼自体の診断は変形があるため容易です。
第一に血管損傷の有無を足背動脈で確認します。
血管造影での確認も行い、下腿の感覚・運動障害を確認します。
◆画像検査
整復後、骨折などの有無をレントゲンで確認します。
MRIやCTで他の靭帯や半月板損傷の有無を確認します。
◆血管造影
動脈損傷の有無や範囲を確認します。
5.膝関節脱臼の一般的な治療
整復後は固定などをして関節周囲の治療を行います。
脱臼には靭帯の断裂や損傷が伴うため靭帯の再建術を行います。
脱臼時に血管の損傷が伴っている場合は脱臼整復後すぐ手術にて血管の再建術を行います。
◆保存療法
・整復
脱臼方向に応じて整復を行います。
・固定
損傷度合いにもよりますが、8週間程度のギプス固定を行います。
その後は装具を装着します。
・運動
固定中は他の関節の運動を行います。
その後は装具を付け運動を他動や自動にて可動域訓練を続けます。
◆手術療法
・靭帯再建術
靭帯の損傷に応じて靭帯の再建術を行います。
・血管再建術
血管断裂が確認されれば緊急の手術が必要となります。
6.膝関節脱臼の合併症
◆内外側側副靱帯損傷
膝の内外側に付く靭帯の損傷をいいます。
脱臼時にどちらかの靭帯損傷を伴います。
内側側副靱帯損傷についてはこちら
外側側副靱帯損傷についてはこちら
◆前後十字靭帯損傷
膝の関節内にある前後十字靭帯の損傷をいいます。
脱臼時にはどちらかもしくは両方の靭帯損傷を伴います。
前十字靭帯損傷についてはこちら
後十字靭帯損傷についてはこちら
◆内外側半月板損傷
膝関節内にある半月板の損傷をいいます。
回旋脱臼では半月板の損傷を伴いやすいです。
内側半月板損傷についてはこちら
外側半月板損傷についてはこちら
◆神経損傷
脱臼時に総腓骨神経や脛骨神経の損傷を伴うことがあります。
◆血管損傷
膝窩動脈の損傷を伴うことがあります。
前方・後方脱臼では膝窩動脈損傷を伴いやすく緊急手術が必要となります。
◆下腿コンパートメント
動脈損傷を伴う場合では血液が下腿に流入し内圧が上がり神経や血管の圧迫を続発することがあります。
場合によっては皮膚の切開を行います。
7.膝関節脱臼の予後と後遺症
膝の周囲の靭帯断裂を伴うため動揺性などの機能障害を残すことがあります。
固定後は靭帯損傷の再評価を行い靭帯の再建術を行います。
固定期間も長く靭帯の断裂を伴うことが多いため完全な機能回復は難しいです。
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