an's diary 杏の日記, 痛み, 膝の痛み
10.162017
膝の痛みと違和感(不安定性)【後十字靭帯損傷】の症状・原因・治療
1.後十字靭帯損傷とは
後十字靭帯損傷とは、膝の関節内にある後十字靭帯の損傷をいいます。
主に車の事故やバイク事故、ラグビーなどのコンタクトスポーツで受傷することが多い疾患です。
完全断裂を起こすことは少なく、単独損傷では症状も軽度のため、しばしば放置されることもあります。
損傷の仕方によっては、膝の不安定感や膝崩れなどの症状が残ることがあります。
基本的には保存療法で治療を行います。
2.後十字靭帯損傷の症状
◆膝周囲の痛み
急性期には膝の周囲に激痛が伴います。
時間経過とともに痛みはひいてきます。
◆可動域制限
痛みのために膝が動かしにくくなります。
炎症が治まると可動域は改善してきますが、不安定性が残ることが多いです。
◆腫れ
炎症が起こるため膝周囲が腫れが認められます。
◆圧痛
膝裏を押さえると痛みがあります。
◆皮膚損傷
転倒や事故による靭帯損傷では、脛骨の上端部などに皮膚の損傷が認められます。
◆不安定性
急性期では痛みや腫れのため膝が動かしにくい症状が主にあります。
放置した場合や損傷の仕方によっては、膝関節に不安定感を残すことがあります。
日常生活やスポーツに支障のでる場合は手術によって靭帯の再建が行われます。
◆膝崩れ(Giving Way)
慢性的な症状として患側に体重がのった際に膝がカクッと力が抜けるような膝崩れ現象が起こります。
主にジャンプの着地時やダッシュ時、階段の昇降時や坂道の下りに起こることが多いです。
変形性関節症や半月板損傷を起こすこともあるため手術により靭帯の再建を行うことがあります。
3.後十字靭帯損傷の原因
大腿骨に対して脛骨が後方に押し込まれる力によって靭帯が損傷を受けます。
主に、
・交通事故
ダッシュボード損傷とも言われ、車が急停車しダッシュボードに膝(脛骨の上端部)をぶつけることによって起こります。
・転倒
膝を90度曲げた状態で転倒すると脛骨が後方に押し込まれるため受傷します。
・ラグビー
膝下にタックルを受けることで後十字靭帯が損傷を受けることがあります。
これらの受傷機転で損傷を受けることが多いです。
4.後十字靭帯の構造
前十字靭帯より血流も豊富で、損傷を受けても修復されやすいです。
太さも二倍あるため、損傷を受けても完全断裂より部分断裂のほうが多くなります。
◆靭帯の走行
大腿骨の顆間窩から起こり、脛骨の顆間隆起後方に付着します。
◆靭帯の役割
・大腿骨に対して脛骨が後方に移動するのを制限する
・大腿骨に対して脛骨が内旋する運動の安定性
・関節が動く際の支点を作る
などの作用があります。
損傷を受けることでこれらの機能が障害されます。
5.後十字靭帯損傷の検査と診断
◆画像検査
レントゲンにて骨の異常がないか検査します。
MRIでは靱帯損傷の程度や他の靭帯損傷の有無を検査します。
◆後方引き出しテスト
仰向けの状態で膝を曲げます。
検者は脛骨の上端部を把持して後方に押し込むような力を加えます。
この際に異常な可動性があれば陽性となります。
急性期では膝窩部に激痛を訴えることもあります。
◆後方落ち込み徴候
仰向けで両膝を同じ角度で曲げます。
それを側方から見ると患側の脛骨が後方に落ち込んでいることが認められます。
6.後十字靭帯損傷の一般的な治療
基本的には保存療法が選択されます。
◆保存療法
・安静
受傷直後は安静にします。
松葉づえなどで体重がかからにようにします。
・固定
ギプスでの固定が行われます。
軽度の場合ではサポーターやテーピングで固定することもあります。
・アイシング
炎症期は膝を冷やします。
・物理療法
周囲の筋肉が固くならないように低周波・温熱療法など機器を用いて筋の弛緩を促します。
・運動療法
固定し、症状が軽減してくると、筋の萎縮や筋力が低下が起き、膝全体の動きが制限されます。
それらを防止するため徐々に運動を行います。
・薬物療法
初期には炎症を抑える鎮痛薬や塗り薬なども処方されます。
◆手術療法
スポーツや日常生活で支障が出る場合は手術が選択されます。
・靭帯再建術
他の筋肉の腱を用いて靭帯を再建する手術が行われます。
7.後十字靭帯損傷の鑑別
◆外側側副靱帯損傷
膝の外側に付着する靭帯の損傷をいいます。
外力が強いとこれらの靭帯を複合した損傷も起こるため鑑別が必要です。
◆半月板損傷
膝関節にある軟骨の損傷を半月板損傷といいます。
しばしば後十字靭帯損傷による膝崩れや不安定感を残していると徐々に損傷されることもあります。
8.後十字靭帯損傷の予後と後遺症
血流が豊富で、脛骨の形状から靭帯への負担も少ないため、予後は良好です。
程度は異なりますが、スポーツへの復帰も約4ヶ月ほどで可能となります。
しかし、不安定感や膝崩れなどの症状が残っている場合は手術が選択されます。
放置していると変形性膝関節症になったり、半月板損傷がおこることがあります。
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