痛み, 膝の痛み
10.212017
膝の内側の痛みと不安定性【膝内側側副靱帯損傷】の症状・原因・治療まとめ
1.膝内側側副靱帯損傷とは
膝の内側にある、大腿骨と脛骨をつなげる内側側副靱帯が事故やスポーツ活動などで、靭帯が部分的または完全に切れて損傷し、痛みや腫れを起こす疾患です。
初期に固定などの適切な処置をしないと、膝の不安定性を残します。
膝の靭帯損傷の中で最も頻度が高く、前十字靭帯や半月板損傷と合併する事が多いです。
2.膝内側側副靱帯損傷の症状
◆膝の内側の痛み
運動時の痛みと、内側側副靱帯の走行に沿った部位に痛みや圧痛が出ます。
特に大腿骨側の内側側副靭帯が大腿骨に付着している部分での圧痛が著明です。
膝を外反すると激痛を訴えます。
※外反とは膝が内側に入ることです。
◆可動域制限
膝の曲げ伸ばしが痛みのため制限されます。
◆腫脹
炎症により、膝の内側に腫れが出現します。
◆不安定性
重症例では歩行時にぐらつき、外れそうになったり、踏ん張りがきかなくなります。
荷重をかけると外反動揺性が出現します。
3.内側側副靱帯について
大腿骨と脛骨を結ぶ靭帯で、膝の左右へのブレを防ぐ靭帯です。
◆靭帯の走行と役割
・走行
大腿骨の内側上顆から起こり、脛骨の内側面と内側半月の周縁に付着します。
・役割
主に膝関節の外反や下腿の外旋を制動しています。
スポーツなどの急な方向転換時に膝を安定させます。
4.内側側副靱帯損傷の原因
ラグビーやサッカーなどのコンタクトスポーツで、タックルを受けた際や、交通事故などで膝に外側から内側に外力が働く事により、膝の関節に外反や外旋が強制されます。
外反や外旋が強制されると、内側側副靱帯は過緊張し、最終的に断裂してしまうのが原因です。
◆内側側副靱帯損傷を起こす例
・スノーボードやスキーでの転倒時や、急な方向転換時に膝が外反し負傷します。
・ジャンプでの着地時に膝が内側に入り負傷します。
・アメフトなどのコンタクトスポーツで、相手選手との衝突時に膝に外反が強制され負傷します。
・交通事故で膝に外反が強制された時に負傷します。
◆内側側副靱帯損傷が多いスポーツ一覧
・ラグビー
・アメフト
・サッカー
・スノーボード
・スキー
・テニス
・バスケットボール
・バレーボール
・体操
5.内側側副靱帯損傷の検査と診断
◆問診、触診
スポーツの種目や怪我をした時の状況を問診し、触診で、圧痛部位や腫れを確認します。
◆X線検査
骨折の有無を確認します。
膝に外反ストレスを加えた撮影でのみ損傷の有無と程度が診断出来ます。
◆MRI検査
内側側副靱帯の損傷程度や、その他の靭帯や半月板損傷、出血の有無を確認します。
◆外反ストレステスト
検者が片方の手で膝の外側を把持し、もう一方の手を足関節の内側に当てて、膝関節の内側が開くように外反外力を加えます。
健足との比較で側方動揺を認めれば陽性となります。
6.内側側副靱帯損傷の一般的治療
内側側副靱帯の単独損傷であれば、基本的に保存療法を行います。
◆保存療法
・安静
受傷直後は安静にします。
松葉づえなどで患部に負荷がかからないようにします。
・固定
膝関節30度屈曲、軽度内反位でギプスで1~2週間固定します。
軽度の場合ではサポーターやテーピングで固定することもあります。
・アイシング
炎症期は膝を冷やします。
・物理療法
周囲の筋肉が固まらないように低周波や温熱療法など機器を用いて筋の弛緩を促します。
・運動療法
固定し、症状が軽減してくると、筋の萎縮や筋力低下が起き、膝全体の動きが制限されます。
それらを防止するため徐々に運動を行います。
・薬物療法
初期には炎症を抑える鎮痛薬や塗り薬なども処方されます。
◆手術療法
スポーツや日常生活で支障が出る場合は手術が選択されます。
・靭帯再建術
他の筋肉の腱を用いて靭帯を再建する手術が行われます。
7.内側側副靱帯損傷の鑑別
受傷機転を問診し、触診で圧痛部位を確認するのが重要で、特に前十字靭帯と内側半月板損傷の有無を確認します。
・大腿骨内側上顆剥離骨折
・特発性骨壊死
8.内側側副靱帯損傷の予後と後遺症
単独損傷で、受傷直後に適切な固定を行った場合は予後は良好です。
正しいリハビリを行えば、筋力や関節可動域が元に戻り後遺症はなく、スポーツ復帰も比較的早いです。
痛みがない事がスポーツ復帰の判断基準となります。
前十字靭帯と半月板損傷を合併した場合の術後は、3~6ヵ月程度のリハビリを行い、徐々にスポーツ復帰となります。
痛みがあるまま、無理に運動を続けていると膝の安定性がなくなり、膝崩れによる半月板損傷や変形性膝関節症となるため受傷時は早期に医療機関を受診してください。
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