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顔面神経麻痺の原因・症状・治療

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1.顔面神経麻痺とは

顔の表情を作る筋を支配する「顔面神経」が麻痺することを顔面神経麻痺と言います。
どちらか片側の表情が作れなくなり、味覚や聴覚にも障害が起こることもあります。

2.顔面神経について

顔面神経は12ある脳神経の第7脳神経です。
顔の表情を作る筋肉の支配だけでなく聴覚や味覚にも関与しています。

顔面神経の走行

顔面神経は脳幹の橋(きょう)という部分にある顔面神経核から起こります。
そこから側頭骨の中を通り、耳の後ろ(茎乳突孔)から側頭骨の外に出て耳下腺の中を通ります。
耳下腺から表情筋に至り、表情筋を動かします。

顔面神経の役割

◆顔の表情を作る筋肉である表情筋の支配

◆音を伝達するアブミ骨に付着するアブミ骨筋の支配

◆舌の前2/3の味覚

◆涙や唾液の分泌

に信号を送る働きがあります。

3.顔面神経麻痺の原因

 

 

 

◆ベル麻痺

明らかな原因がなく突然発症する顔面神経麻痺を「ベル麻痺」と言います。
顔面神経麻痺全体の約7割を、このベル麻痺が占めます。

◆ラムゼイ・ハント症候群

ラムゼイ・症候群とは、免疫の低下により体内に潜伏している水痘(すいとう)・帯状疱疹ウイルスが再活性化します。
すると顔面神経や蝸牛神経、前庭神経に炎症が起き、耳鳴り・難聴・めまい・顔面神経麻痺・耳周辺に水疱などの症状を起こす病気です。

※ラムゼイ・ハント症候群について

◆ウイルス性

潜伏感染により顔面神経麻痺が起こる説もあります。
昔に感染したウイルスが体内に潜伏し、体の免疫低下により再活性化し再感染を起こすというものです。
近年では一型単純ヘルペスウイルスによる発症が考えられていますが完全に証明されているわけではありません。

◆外傷性

側頭骨骨折などの頭部外傷により顔面神経が損傷を受けると顔面神経麻痺が起こります。

◆中枢神経疾患

脳腫瘍・脳血管障害により顔面神経が障害を受けると顔面神経麻痺が起こります。

 

4.顔面神経麻痺の症状

完全麻痺か不完全麻痺かによって症状の度合いは異なります。

◆顔の片側が動かしにくくなる

・口元からよだれが出る
・飲んだもの食べたものが口から出る
・目が閉じない
・笑えない
・頬・口角が下がる

◆聴覚が過敏になる

顔面神経は耳にあるアブミ骨筋という筋肉を支配しています。
アブミ骨は音を伝達する役割があり、アブミ骨筋はこの骨に付着しています。
この筋肉は外から大きい音が入ってきたときに、振動を抑える役割があります。
しかし顔面神経麻痺になるとこの筋肉が上手く作用しなくなり聴覚が過敏になります。

◆舌前2/3の味覚がなくなる

顔面神経は下の前3/2の味覚を支配しています。
そのため顔面神経が障害されると味覚障害がおこります。

5.顔面神経麻痺の分類

 

 

症候性 特発性
末梢性 ラムゼイ・ハント症候群

中耳炎

頭部外傷

耳下腺腫瘍

ライム病

顔面神経鞘腫

糖尿病

など

ベル麻痺
中枢性 脳腫瘍

脳血管障害

脳の炎症・変性

など

 

 

◆中枢性・末梢性

神経のどの部分で障害されているかによって末梢性と中枢性に分かれます。

・中枢性(核上性)顔面神経麻痺

中枢性とは中枢神経である脳の中で障害を受けた場合に分類されます。
皮質延髄路や皮質網様体路などでの障害を言います。
脳血管障害や脳腫瘍による顔面神経麻痺は中枢性顔面神経麻痺となります。

中枢性と末梢性の鑑別点は、一側の顔面が均一に麻痺するものは末梢性です。
対して中枢性では眉からおでこに麻痺がみられない場合は中枢性を疑います。

 

・末梢性(核下性)顔面神経麻痺

末梢性とは脳幹から先での損傷を受けた場合に分類されます。
末梢性顔面神経麻痺の特徴として片側のみに麻痺が起こります。
頭部外傷や中耳炎によるもの、ベル麻痺は末梢性顔面神経麻痺に分類されます。

 

◆特発性・症候性

原因が明らかかそうでないかによって分類が異なります。

・特発性顔面神経麻痺

原因が明らかでないものを「特発性」と言います。
ベル麻痺などの原因が特定されていないものを特発性顔面神経麻痺といいます。

・症候性顔面神経麻痺

原因が明らかなものを「症候性」と言います。
頭部外傷による顔面神経麻痺や、脳腫瘍による麻痺は原因がはっきりしています。
そのため「症候性顔面神経麻痺」に分類されます。

 

 

6.顔面神経麻痺の診断と検査

特徴的な表情のため顔面神経麻痺の診断は容易です。
しかし顔面神経麻痺がどの部位でどのようにして起こったのかを調べないといけません。
麻痺の原因や重症度によって治療が大きく異なるからです。

◆CT・MRI検査

脳や耳周辺に異常がないか検査します。

◆耳小骨筋反射

検査を行う側の耳にプローブ(耳栓)をします。

反対側にヘッドホンを付け検査を行います。

◆涙液量測定

細いろ紙の先端を折り曲げ目の中にある涙点に挟み目を閉じます。

5分ほど放置し涙の量を測定します。

◆味覚検査

甘味・塩味・酸味・苦味を種々の濃度でしみ込ませたろ紙を舌の上に置きます。
また、電気味覚計により障害の程度が測定します。
微かな電気刺激で金属味が生ずることを利用したもので、舌の上に電極をあて電流の強さを変えて測ります。

◆唾液腺検査

ガムを10分ほど噛み唾液の量を測るテスト

ガーゼなどを2分間噛み唾液の量を測るテスト

などがあります。

◆血液検査

ウイルスの有無や他疾患の除外診断を行います。

◆神経興奮性検査(NET)

顔面神経を最小電気刺激で興奮させ筋肉の収縮をみる検査します。

◆誘発筋電図検査(ENoG)

顔面神経を電気刺激で興奮させ表情筋の収縮を筋電計で測定します。

◆表情筋動作の評価

以下の項目を各4点計40点で評価します。
部分麻痺がある場合は2点、完全麻痺の場合は4点になります。

1.安静の時に顔が非対称に見える
2.額にしわが寄せられる(眼を上に向けると眉毛が上に動く運動です)
3.軽い閉眼(かるく両目を閉じます)
4.強い閉眼(おもいっきり眼をつむります)
5.片目つむり(麻痺の側で)
6.鼻翼を動かす(鼻をヒクヒクします)
7.頬をふくらませる(ほっぺをプーッとふくらませます)
8.イーと歯を見せる(イーと声を出して)
9.口笛を吹く
10.口をへの字に曲げる(難しいですが,むくれつらです)

 

7.顔面神経麻痺の一般的な治療

原因によって治療は異なります。
場合によっては手術が適応する場合もあります。

◆薬物療法

・ウイルスに対する薬
・ステロイド薬
・ビタミン剤
・点眼薬
・星状神経節ブロック注射
など

◆保存療法

・リハビリ

慢性期では顔のこわばりや異常共同運動に対して顔の運動やマッサージを行います。

・高気圧酸素治療(HBO、Hyperbaric oxygen therapy)

一人もしくは数人で入る装置の中で、大気圧より高い気圧(2〜3気圧)で高濃度の酸素を一定時間吸うことで様々な症状を改善する治療法です。
血液中に溶解する酸素の量を、高圧にすることで増やします。

高気圧酸素治療の適応に顔面神経麻痺があります。

高気圧酸素治療についてはこちら

◆手術

顔面神経麻痺では手術を必要としない場合が多いです。
突然起こるベル麻痺・ラムゼイ・ハント症候群ではほとんどが薬物療法です。
保存療法や薬物療法で改善が見られない場合、原因が顔面神経の圧迫や断裂などを起こしている場合は手術が適応となります。

8.顔面神経麻痺の鑑別疾患

顔面神経麻痺では特徴的な表情があるため他疾患との鑑別は容易です。

重要なのは、「原因」です。
脳の異常や末梢神経に損傷があるのか、緊急性を要するのかなど、様々な可能性を考慮しなければなりません。

 

9.顔面神経麻痺の予後と後遺症

◆不全麻痺

不全麻痺の場合予後は良好です。

◆完全麻痺

完全麻痺の場合では2週間以内に寛解する場合は予後が良いです。
しかし改善が三週間以降もしくは改善がみられない場合は後遺症が残ることがあります。
味覚障害・聴覚障害の他、顔面神経麻痺症状が残ります。
顔面神経が治癒する過程で誤った再生をすることがあり、口と目が同時に動いてしまうこともあります。(異常共同運動)
食事の際に涙が流れるワニの涙症候群を呈することもあります。

 

 

 

※内容に誤りや情報が古いなどありましたらお手数ですがご一報ください。

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