手の痛み
2.272018
子供の肘の内側の痛みと腫れ【肘内側上顆骨折】症状・原因・治療まとめ
1.上腕骨内側上顆骨折について
肘の内側部の突起を上腕骨内側上顆といい、この部位での骨折を上腕骨内側上顆骨折といいます。
子どもに起こりやすい肘の骨折の中で上腕骨顆上骨折・上腕骨外顆骨折に次いで多い骨折です。
・原因
主に手を衝いて転倒した際に受傷します。
他にも投球動作などの繰り返し肘に負荷のかかる動作でも起こりますが、今回は転倒などによる急性のものについて説明します。
転倒した際に肘に外反力がかかり、肘内側に付着する筋肉や靭帯に引っ張られて骨折するものと、稀ですが軸圧の力が加わり肘の内側部を骨折するものがあります。
・症状
肘内側の痛みと腫れ、肘が曲げ伸ばしできないなどの症状があります。
・治療
骨折部のずれが少ない、またはない場合は固定などの保存療法を行います。
ずれが著明な場合は手術を行います。
内固定材料を用いて骨接合術を行います。
・予後
内側側副靭帯の損傷や骨折部の癒合が終了してしまう偽関節、尺骨神経への刺激による神経症状などの合併症・後遺症が起こることもあります。
各後遺症に応じた手術を行うこともあります。
内側側副靭帯損傷がある場合、受傷時の年齢が14歳以下では骨の接合術のみの手術となる場合もあります。
2.上腕骨内側上顆骨折の症状
◆肘内側の痛み
骨折に伴い痛みが生じます。
◆肘内側のはれ
骨折部のはれが起こります。
◆肘関節の可動域制限
痛みにより肘の曲げ伸ばしが出来なくなります。
3.上腕骨内側上顆骨折の原因
多くは手を衝いて転倒した際に、肘の内側に牽引力が加わり靭帯や筋肉の付着部である内側上顆部が骨折します。
稀ではありますが、肘に軸圧力が加わり受傷することもあります。
肘関節の脱臼に伴って内側上顆が骨折することもあるため、検査では他の骨折や脱臼の有無を確認します。
12~15歳では骨端線離開の様式をとることが多いです。
◆骨片の転位
内側上顆に付着する前腕屈筋群・回内筋群の牽引により前下方へ転位します。
まれに関節内に骨片を有することもあります。
内側上顆骨折の分類では、
上腕骨内側上顆骨折の分類 | |
Ⅰ型 | 骨片の転位がほとんどない |
Ⅱ型 | 骨片の転位が5mm以上ある |
Ⅲ型 | 関節内に骨片が入りこんでいる |
Ⅳ型 | 肘関節脱臼に伴い、骨片が関節内に入り込んでいる |
4.上腕骨内側上顆骨折の検査と診断
4-1.触診
肘の内側部に圧痛を認め、異常可動性・軋轢音を触知することもあります。
肘の屈伸や回内外動作が不能となります。
4-2.画像検査
レントゲンで骨折の有無を検査します。
本骨折では他の合併症(肘頭骨折・橈骨頭・頚部骨折)などの骨折に注意します。
また、内顆骨端核が出現している場合は骨片と一緒に転位していないことで内顆骨折との鑑別を行います。
5.上腕骨内側上顆骨折の一般的な治療
転位のない場合は保存療法となります。
転位がある場合は内固定材料を用いて骨折部を接合します。
5-1.保存療法
◇整復
肘屈曲位・前腕回内位で内側上顆骨片に術者の母指をあてて上内方に向かって圧迫して整復します。
◇固定
肘内側部に綿花をあてて転位を防ぎます。
肘直角屈曲位・前腕回内外中間位、上腕中央よりMP関節の手前まで固定します。
◇運動療法
骨癒合が確認できたら徐々に運動を行います。
肘の屈伸や回内外運動を行いますが、骨折部の再転位に注意します。
5-2.手術療法
転位が著しい場合は手術を行います。
内固定材料を用いて骨を接合します。
6.上腕骨内側上顆骨折と間違いやすい疾患
◆上腕骨内側上顆炎
内側上顆には筋や靭帯などが付着するため負荷がかかると炎症が生じて肘の内側部に痛みが起こります。
◆上腕骨内顆骨折
比較的少ないですが上腕骨滑車の一部あるいは全体を含む内顆の骨折です。
肘関節の構成に関与する部位での骨折なので早期診断、適切な治療が必要です。
◆肘関節脱臼
若年者に多いです。
脱臼の中では肩関節についで多い脱臼です。
小児の肘関節脱臼は外顆の骨折や内側顆上骨折、橈骨頚部骨折を伴うこともあります。
◆橈骨近位端部骨折
橈骨は前腕の外側部分にありますが、本骨折と同じような受傷の仕方で発生することがあります。
そのため鑑別が必要となります。
◆上腕骨遠位骨端線離開
骨がまだ完全に骨化していない幼児に好発する比較的稀な疾患です。
転倒した際、肘に過伸展力・屈曲位のいずれの肢位でも発生します。
上腕骨顆上骨折とは比較にならないほどの内反肘を起こすこともあるため適切な治療が必要となります。
7.上腕骨内側上顆骨折の予後と後遺症
固定後に再転位などしなければ予後は良好です。
変形治癒や偽関節などが起こった場合肘が動かしにくくなったり痛みを伴うことがあります。
他にも尺骨神経が刺激されて手指に痺れなどの感覚異常が起こることもあります。
他の骨折や脱臼を伴っている場合も後遺症を残しやすいです。
用語解説
偽関節:骨折部の癒合が完全に終了した状態です。
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