痛み, 膝の痛み
10.302017
膝が動かせない高齢者の痛み【脛骨プラトー骨折】の症状・原因・治療まとめ
1.脛骨プラトー骨折について
脛骨は下腿にある骨で、関節面があたかも高原(プラトー)のように見えることから、この部位の骨折を脛骨プラトー骨折と呼ばれています。
交通事故などで、膝に強力な軸圧と内外転力がかかり受傷することが多いです。
高齢者では転倒などの軽微な外力により受傷することもあります。
受傷時から激痛を伴い、高度な腫れや膝が動かせないといった症状があります。
荷重がかかる骨・関節面の骨折ということもあり機能障害を残しやすい骨折です。
神経や血管の損傷を併発することもあるため緊急手術を要することもあります。
2.脛骨プラトー骨折の症状
◆膝の激しい痛み
骨折時特有の激しい痛みが起こります。
◆膝周囲の腫れ
関節内にも骨折が至るため、血が関節内に溜まり高度な腫れとなります。
◆膝の可動域制限
激しい痛みのために膝が動かせなくなります。
荷重もできなくなるため歩行が出来なくなります。
◆感覚障害
強力な外力により受傷することが多く、膝周囲の神経の神経が損傷されることが多いです。
下腿の痺れや感覚障害が起こります。
3.脛骨プラトー骨折の原因
下腿からの軸圧に伴い内外転力が加わることによって受傷します。
交通事故などの強力な外力によるものから、高齢者では転倒などの軽微な外力で受傷することがあります。
高齢者の場合、関節面の陥没が起こることもあります。
さらに脛骨は骨密度が脛骨外側の方が低く、特に前2/3が脆弱部位となります。
骨折線の入り方によって分類が異なります。
◆分類
・Hohl分類
現在一般的にはHohl分類が使われています。
・DePalma分類
今回は分かりやすく解説するため単純な分類を使用します。
脛骨の内外顆と両顆に分類されます。
この他にも陥没が起こることもあります。
◇外顆骨折
外反膝がみられ、骨片は下後方に転位します。
プラトー骨折では外顆の骨折が多いです。
◇内顆骨折
内反膝がみられ、骨片は下後方に転位
腓骨頭骨折を合併することもあります。
◇両顆骨折
逆Y字の骨折線が入ります。
4.脛骨プラトー骨折の検査と診断
◆触診・視診
骨折時特有の症状が起こります。
膝は骨折側に変形するため内外反変形が起こります
◆画像検査
レントゲンで骨折の有無や他の骨折を検査します。
MRIやCTでは軟部組織の損傷の有無や骨折の転位方向を検査します。
5.脛骨プラトー骨折の一般的な治療
転位が少ない場合や内科的疾患により手術が行えない場合は保存療法が選択されます。
しかし高度な外力により受傷することが多いため手術による治療を行います。
◆保存療法
・整復
骨折部を元の位置に整復します。
骨折線が関節面に至るため治癒後も機能障害を残すことが多いです。
・安静
初期には安静にします。
松葉づえを用いて荷重をかけないようにします。
・固定
膝関節を軽度屈曲位で、ギプスによって固定します。
高挙安静によって腫れの消退に努めます。
3~4週間はギプスにより固定します。
・運動療法
骨折部の経過を観察しながら運動を行います。
おおまかに、6週までは骨折部以外の運動を行います。
6~12週では部分荷重などの膝周囲の強化、12週以降は歩行や走行を行います。
高齢者の場合では早期運動が必要となります。
◆手術療法
活動的な高齢者や青・壮年では5mm以上の陥没があれば手術が適応となります。
観血的に整復し、スクリューや支持プレートで固定します。
骨欠損がある場合では人工骨あるいは自家骨を移植します。
術後の固定は3~4週間となります。
6.脛骨プラトー骨折の合併症
◆内外側半月板損傷
関節内にある半月板を損傷します。
本疾患では約半数に半月板損傷が起こります。
内側半月板損傷についてはこちら
外側半月板損傷についてはこちら
◆内外側側副靱帯損傷
膝の内外側にある靭帯損傷です。
本疾患では10~20%に側副靭帯損傷が伴います。
内側側副靱帯損傷についてはこちら
外側側副靱帯損傷についてはこちら
◆前後十字靭帯断裂
大腿骨に対して前後の安定性を担う靭帯が損傷します。
前十字靭帯損傷についてはこちら
後十字靭帯損傷についてはこちら
◆腓骨頭骨折
外顆骨折では腓骨頭の骨折を伴うことがあります。
◆下腿コンパートメント症候群
高度な内出血により下腿に血液が流入します。
下腿は全4区画に分かれており、その中にある神経や筋、血管が圧迫され障害を起こします。
◆神経・血管障害
強力な外力により受傷するため膝関節周囲の神経や血管が損傷を受けます。
下腿の冷感や感覚障害、シビレなどが起こります。
7.脛骨プラトー骨折の予後と後遺症
転位が少ない場合は予後は良好です。
しかし脛骨プラトー骨折は関節内の骨折のため、膝関節の機能障害が残りやすいです。
関節周囲の拘縮や強直、膝の内外反変形、膝の動揺性などの後遺症を残すことが多いです。
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