膝の痛み
10.102017
膝の違和感と痛みの原因【膝窩嚢胞(ベーカー嚢胞)】まとめ
1.膝窩嚢胞(ベーカー嚢胞)とは
引用文献:標準整形外科学 第12版
膝の裏にできる袋状に突出したものを膝窩嚢胞(ベーカー嚢胞)といいます。
滑液包という袋に黄色い粘稠な液体が溜まり、膝裏の腫れとして確認できます。
基本痛みは無く動作時の違和感があります。
しかし袋が破れたりすると痛みや浮腫といった症状を発症します。
袋の大きさはゴルフボールから野球ボールの大きさまで様々です。
この袋はしばしば関節を包む袋と交通していることがあります。
50歳以上の女性に多く、小児では稀な疾患です。
2.膝窩嚢胞(ベーカー嚢胞)の症状
◆滑液包の膨らみによる症状
滑液包の膨らみで痛みが起こることはさほどなく、圧痛や熱感もありません。
・膝を伸ばした際の違和感
膝を伸ばすと膝窩にある筋肉や皮膚が緊張するため違和感が増強します。
・正座やしゃがみ動作での違和感
膝を過度に曲げる動作を行うと膝窩嚢胞が圧迫されるため違和感を感じます。
◆嚢胞が破れ滑液が漏れた場合
嚢胞が破れた場合血栓性静脈炎に似た症状引き起こすことがあります。
この場合痛みが強く膝の可動域制限なども生じます。
・発赤
炎症が起こるため皮膚に赤みがでます。
・膝窩の痛み
周りの組織に滑液が流れ込み炎症が起こります。
そのため膝窩に痛みを生じます。
・膝が動かしにくい
痛みのために可動域制限がおこります。
深く曲げたり伸ばしたりすることができなくなります。
・浮腫
時には静脈炎をおこすため、血管の透過性が増し、下腿に浮腫が起こります。
・圧痛
膝窩を触ると痛みが生じます。
3.膝窩嚢胞(ベーカー嚢胞)の原因
はっきりとした原因はわかっていませんが、炎症が起きやすい状態であることが問題となります。
考えられる原因として、
◆膝の使い過ぎ
膝の屈伸を反復するような動作を繰り返し行うことやスポーツ選手に多くみられます。
そのため炎症が起き、腫れてくることもあります。
◆反張膝
反張膝とは膝を沿った(過伸展)状態のことをいいます。
生まれつき膝が沿った状態の場合や外傷後に反張膝となる場合もあり、膝窩の組織に負担がかかりやすくなります。
◆変形性膝関節症
軟骨がすり減り骨が変形することをいいます。
加齢や膝の酷使、肥満などが関与しているといわれています。
関節内に炎症が起きやすい状態になっているので変形性膝関節症に続発することもあります。
◆関節リウマチ
関節リウマチでは全身性に炎症が起こりやすい状態になります。
そのため膝に負担がかかるような動作では炎症が起き膝窩嚢胞が起こりやすくなります。
◆半月板損傷
半月板損傷後は関節内に炎症が起こりやすくなります。
◆十字靭帯損傷
関節の動きを制限する靭帯が損傷を受けると不安定になります。
そのため過度に動いてしまい、炎症が起こりやすくなります。
これらの原因があげられています。
4.膝窩嚢胞(ベーカー嚢胞)の検査と診断
◆触診
膝窩を押さえて、膝窩嚢胞の有無を調べます。
◆画像検査
MRIや超音波での検査をします。
嚢胞の有無や他の疾患の除外のために画像検査を行います。
◆関節造影
嚢胞の広がりや量を評価します。
5.膝窩嚢胞(ベーカー嚢胞)の一般的な治療
◆保存療法
・関節穿刺
直接嚢胞に針を刺し滑液を取り除きます。
・ステロイド薬・非ステロイド薬の投与
炎症を抑える薬を直接投与します。
◆嚢胞が破れている場合の治療
・安静
炎症が起きているため膝を動かさないように安静にします。
・患側を高くする
浮腫が起こるため心臓より高い位置に足を挙上します。
・薬物の投与
抗凝固薬や結核などにより感染が起き化膿している場合は、抗菌薬も投与する。
◆手術療法
保存療法で効果がなく、再発する場合は手術で嚢胞を摘出します。
6.膝窩嚢胞(ベーカー嚢胞)の鑑別疾患
◆滑膜肉腫
膝窩部に好発する腫瘍性疾患です。
◆血栓性静脈炎
膝窩嚢胞が破れると静脈炎が起こります。
血栓性の静脈炎か、嚢胞が破れたことによる静脈炎なのかを判断しなければいけません。
膝窩嚢胞が大きくなり静脈を圧迫することで血栓性静脈炎を起こすこともあるため鑑別が困難となります。
7.膝窩嚢胞(ベーカー嚢胞)の予後と後遺症
膝窩嚢胞に溜まった滑液を抜き、再発しなければ経過観察となります。
嚢胞が大きくなると神経や血管を圧迫し、それに応じた症状を発症するため注意が必要です。
また、血栓性静脈炎や腫瘍性の疾患と類似しているため、膝窩の腫れに気づいたら医療機関を受診しましょう。
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