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ティーチェ病の症状の治療とメカニズムの考察 【当院の場合】

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ティーツェ症候群(ティーチェ病)の症状・原因・治療(←概論はこちら)

1.当院のティーツェ(ティーチェ)病の治療

ティーチェ(ティーツェ、Tietze)病は、当院では主に関節モビライゼーション技術を使って治療します。(時には鍼灸治療を併用することもあります。)

ASMという技術を使います。AKAを応用した当院オリジナルの手技療法です。

即効性があり、患者さんは治療直後に呼吸時、体動時の痛みが軽減するのを自覚します。

 

2.ティーツェ(ティーチェ)病の病態の考察

 

【図1】

一般に原因不明とされるティーツェ(ティーチェ)病ですが、当院の治験からは、胸肋関節の捻挫、または骨折(軟骨損傷)と、それに伴う※関節機能異常を示唆されます。

(※ここでは関節の動きが悪いくらいの理解で結構です。)

第2~第4(第7)の胸肋関節の捻挫、または軟骨損傷です。

捻挫、軟骨損傷なので、X線検査での描出は困難です。

しかし、丁寧に視診、触診を行えば、胸肋関節にびまん性の腫脹や、捻挫、骨折(軟骨損傷)を示唆する特有の所見、動揺痛、介達痛、マルゲイン痛などを確認することができます。

時に肋間神経痛様症状が出現することもありますが、炎症や肋間筋の刺激症状、関節機能異常による関連痛をそう認識しているので施術後即座に軽快し3~5日で消失します。

一般の方には馴染みが無いかも知れませんが、捻挫、骨折は急激な外力で発生するケースばかりではありません。

比較的軽微な力が、持続的・繰り返し、生理的範囲を超えてかかって起こるものもあります(例:疲労骨折)。

 

本来、胸肋関節の捻挫、骨折は、ティーチェ病の除外項目ですが、画像などの明白な所見や損傷の機転が見つからない場合、そのように診断されていることがあるようです。

数が多くは無いため、すべてのティーチェ病がそうであるとは言えませんが、従来考えられているより多く含まれているようです。

診察と施術の結果からそのように考えています。

 

3.ティーツェ(ティーチェ)病の発生機序の考察

詳しい問診の結果、発症前にデスクワークや長時間、荷物を背負った場合など、比較的長時間の姿勢不良が確認されることが多いです。

また、好発年齢は、思春期から40才代の女性に多いとされます。

上記から、

①不良姿勢

②内分泌(ホルモン)

③肋軟骨の弾力変化

など複数の要因に、比較的軽微な力が繰り返し持続的に肋軟骨の継ぎ目にかかることで起こると考えます。

 

その他、慢性関節リウマチなどの自己免疫疾患の素因が影響していることもあるようですが、詳細は現在不明です。

もっと数多くの症例を積めば、分かってくることも多いと思われます。

 

4.発症のメカニズムと治療の手順

 

【図2】カパンディ関節の生理学Ⅲ 体幹・脊柱 医歯薬出版 改変

 

直接の原因は前述の通りですが、その多くは背部にある肋椎関節の関節機能異常からの二次性です。【図2参照】

背部の肋椎関節の関節機能異常から同じ高さの肋骨を介して前方の胸肋関節、肋軟骨に捻る、曲げる、引く力が持続的にかかり起こります。

ですから、手順は肋椎関節の機能異常を回復して、肋骨を介した捻る、曲げる、引く力を除去することから始めます。

その後、当該部位(胸肋関節)に施術します。

多くの場合、姿勢不良の原因が腰部にあります。その場合は、骨盤(仙腸関節)の治療から始めます。

つまり、骨盤(仙腸関節)から順次上行し、背骨(椎間関節)と確認・施術し、肋椎関節へ至ります。

 

捻挫、骨折なのでアイシングや固定も状態によっては用います。

ただし、固定は部位的に困難なのと、非常にデリケートな損傷なので、固定ではなく弾性テーピングによる誘導・補助(筋骨の正しい動き)が主体になります。

無くても問題ないことが多いです。

 

5.施術上の留意事項

胸肋関節は、胸骨肋軟骨結合と肋骨肋軟骨結合とでなります(図1参照)。

【図3】カパンディ関節の生理学Ⅲ 体幹・脊柱 医歯薬出版 改変

 

※第2~第4の胸骨肋軟骨結合は滑膜関節なので、少々未熟な技術でも大きな問題が起こることは多くありません(あくまでも肋骨肋軟骨結合と比較して)。

(※文献によっては2~7とするものもあるが個人差であると考えています)

しかし、肋骨肋軟骨結合は、関節包や靱帯による補強が無いため慎重な施術が必要です。

具体的には、「動かす」のではなく「合わせる」整復が必要です。

当該部位の端と端を確実に、かつそっと軽くコンタクトし、患者さんの呼吸を利用して整復するくらいでいいです。

肋骨軟骨結合は、【図3】のようにソケットのような形状なので、それに応じた整復は大変デリケートです。

経験上、回旋が多いですが、屈曲や牽引のパターンもあります。

その為、部位の状態や骨格、年齢、妊娠の有無など安全性を最優先する場合、上述の手順、背部の肋椎関節の整復と胸部のテーピングで様子を見るのも一つの方法です。

それだけでも寛解することは少なくないので欲張らないことも重要かと思います。

一次性である背部の関節機能異常を除去し、当該部位に誘導をかけることで患者さんの自発的呼吸運動で整復されるためと推測されます。

その場合、施術後3~5日で軽快し、2~4Wで治癒します。ですから施術後3~5日様子を見るのが良いでしょう。

 

6.施術後の経過と予後

施術を行い、諸注意を守ることが出来れば、捻挫、骨折なのでそれに準じた期間で治癒します(2W~4W)。

いったん治癒してしまえば、当該部位の組織が癒合して強靭になるのでそうそう再発することはありません。

しかし、原因となる不良姿勢が仕事上の理由などで改善出来ない場合、繰り返し、治癒期間が伸びます。

ですから、患者さんが発症と増悪の条件を自ら観察・理解することが大変重要です。

 

また、短期間で自然治癒することもありますが、長期に及ぶと変形し、美容上の問題を残すこともあります。

その場合でも治療することにより痛みは消失しますが、変形は残ることが多いようです。

ですから、若い女性の場合は早期に積極的に治療すべきとも思います。

 

7.鑑別と転院

受診前に「ティーツェ(ティーチェ)病」と診断されていれば問題ありませんが、鋭い胸痛や呼吸がしにくいなどが見られることがあります。

基礎疾患に心疾患や肺疾患があれば、そのためと誤解されていることもあるようです。

上手く治療出来れば即座に軽快するので、治療してみることで逆に除外することもできます。

即座に軽快しなければ、ティーツェ(ティーチェ)病ではなく、心疾患や肺疾患の可能性があるので専門科に紹介します。

 

8.保険適用について

捻挫、骨折ではありますが、このように高度な専門知識と独自性の高い技術、リスク管理、手間を必要としますので保険適用外となります。

ご了承ください。

 

9.治療家の方へ

ティーツェ(ティーチェ)病は、原因不明で有効な治療法がありません。

臨床上、数が多くはない疾患で多くの場合数カ月で自然に寛解するため、積極的に治療法が研究されていないようです。

しかし、治療院の規模にもよりますが、多い時は年に数例みかけます。

当院では、研修生にはティーツェ(ティーチェ)病の治療の指導を行っており、もし、需要があるようでしたら、公開の勉強会を致しますので当院フェイスブック、ツイッターをチェックしておいてください。

 

追記

西野健二「肋軟骨の研究」数篇の論文によると、

①思春期から肋軟骨の変化が強く起こる。

②肋軟骨の化骨は第1肋軟骨が最も早期かつ強く、第2肋軟骨が最も化骨が弱い。

③化骨の出現年齢の明らかな男女差は見られない。

④中等度の化骨は女性に多く、高度は男性に多い。

とされ、①は仮説を支持しますが、②~④は否定的な結果と言えます。

しかし、川崎医学会誌「大動脈弓,肋軟骨,気管・気管支軟骨の石灰化の頻度に関する検討」(沖本ら)によると、

①60才代 男31.1% 女78.0%

②70才代 男42.5% 女80.0%

③80才上 男66.7% 女92.9%

で、肋軟骨の石灰化は女性の方が圧倒的に高率で肯定的です。

ただし、これは60才代以上の研究です。閉経などを境に女性に急速に石灰化が進むことも考えられます。

となると、参考程度。

また、「加齢の指標としての胸部X線写真像」(前田ら)によると、

①肋軟骨の石灰化は20歳代から約1/5に出現

②30才代より男女計70.2%と急激に陽性率が高くなる

③40才以降は70%以上の高陽性率

④石灰化の部位は第1肋軟骨が最多で左右対称にみられた

⑤石灰化はやや女性に多いが統計的に有意とは言えない

①~③、⑤は肯定的と言えなくも無いですが、④は明らかに否定的です。

こうやって調べてみると、生体と御献体など条件が様々なので、一概に完全否定とまでは言えませんが、概ね否定的とは言えます。

私が推定したティーチェ病の発症メカニズムの3要因①不良姿勢②内分泌(ホルモン)③肋軟骨の弾力変化のうち、既知の知見からは③は否定的と言えそうです。

残念ながら、この要因は取り下げるのが現状、妥当かも知れません。

 

 

 

 

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