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9.202017
RSウイルスとは?わかりやすく赤ちゃんと大人の症状を解説
1.RSウイルス感染症について
軽い風邪様症状から始まる乳幼児に代表的な呼吸器疾患です。
呼吸器疾患で原因となるウイルスは数百種類ありますが、今回はRSウイルスについて解説します。
ほとんどの子どもが感染するありふれたウイルスで、2歳までにはほぼ100%の子どもが感染します。
ウイルスに対する抵抗力が弱い場合は重症化することもあります。
詳しく説明する前に、もし、あなたのお子さんが、1歳未満の赤ちゃんで、「いつもの風邪と違うな」と感じ、下記の項目に当てはまったら、迷わずお近くの病院の受診をお勧めします。
チェックポイント
□ 喉の下や胸がペコペコする(陥没呼吸)。
□ いつもと違う激しい咳込み。
□ 咳で眠れない。
□ ミルクを飲まない。息を吸うのがつらそう。
□ 元気が無い。ぐったりしている。
★RSウイルス感染症の赤ちゃんの症状を楽にする方法【当院の場合】(←おすすめ記事)
2.感染の基礎知識
ウイルスや細菌への感染は一定のルートから感染します。
感染に対する治療もどこへアプローチするかによって対策や治療方法が大きく異なります。
まずは感染の基本的なメカニズムを解説します。
◆感染とは
感染とは「病原体が宿主の体内に侵入して増殖すること」をいいます。
病原体が体内に侵入すると免疫機能が働き種々の症状が起こります。
単に体の表面に病原体が付いている状態は「汚染」といいます。
感染の成立には、感染源・感染の経路・感受性宿主の三つの要因があります。
感受性宿主とは感染にかかりやすい状態の人や動物と言い換えることもできます。
基本的な流れとしては
感染源(病原体)が感染経路経て、宿主の体内に侵入し感染が成立します。
体内に病原体はいるが症状が出ていない状態を不顕性感染といいます。
・感染源
感染源とは病原体がどこに由来しているか示しています。
病原体は自然の中(水・土壌・動物)に増殖し生活しています。
この場所を「病源巣」と言います
土壌に触れた際に感染する場合などは病源巣が「土壌」となります。
・感染経路
経路は大きく分けて直接感染と間接感染によるものがあります。
直接感染
飛沫散布感染・接触感染・母子感染などがあります。
インフルエンザは飛沫散布による感染です。
接触感染には主に性病があげられます。
胎盤や産道を介して感染することを母子感染と言います。
間接感染
食物や飲料水、血液からの感染を媒介物感染と言います。
他にも媒介動物感染や空気感染もあります。
注:飛沫感染と空気感染の違い飛沫感染は比較的近いもの(1メートルほど)で、空気感染は空気中に浮いている小さな粒子によるものです。
・感受性宿主
病原体に対して感受性を持っている人を感受性宿主といいます。
例えば老人や子どもの場合、成人に比べて病原体に対する抵抗力が低いです。
そのため老人や子どもは成人に比べて様々な病原体に対して感受性がある(抵抗力が低い)と言えます。
成人の場合は感受性がない(抵抗力が高い)と言えます。
またもともと先天的な疾患などにより抵抗力が低い人は感染のリスクが上がります。
感染が成立するには下画像のような状態にならなければいけません。
近年では衛生状態が良くなり昔ほど感染症による比率は低下しています。
しかし環境の変化や社会活動様式の変動により感染症の動向も大きく変わっています。
3.RSウイルス感染症の大人の症状
風邪(感冒)様症状がほとんどです。
ウイルスに感染してから2~8日潜伏期間を経て発症します。
症状の程度は様々です。
年齢が上がるほど症状は軽くなる傾向があります。
◆鼻水
鼻粘膜炎症により鼻にある血管が拡張し鼻水がでます。
◆鼻づまり
鼻腔の炎症により腫れるため鼻詰まりが起こります。
◆咳
上気道にも感染するため咳が起こります。
◆発熱
ウイルスに対する反応として発熱します。
◆喘鳴
細気管支炎や気管支炎になることがあります。
この場合ゼーゼー・ヒューヒューと言った特徴的な呼吸をします。
気管支に炎症があるため息苦しさなどもあります。
4.RSウイルス感染症の赤ちゃんの症状
風邪様症状は大人とあまり変わりませんが、乳幼児は特に注意して見ていないと変化に気付きません。
近年では共働きの家庭が多いため、我が子とはいえ些細な変化に気付くことは難しくなりました。
赤ちゃんにとっての医者は母親です。
ご参考までに乳幼児の症状も掲載します。
◆鼻づまり
大人と同様鼻がつまり、息がしづらくなります。
◆鼻水
鼻水が出て、息がしづらくなります。
◆咳
初期では喉になにかつっかえているような呼吸をします。
徐々に咳となり、重症化すると喘鳴なども起こります。
◆喘鳴
ヒューヒュー・ゼイゼイといった呼吸をすることがあります。
これは気管支に炎症が起こっているサインですので医療機関を受診しましょう。
◆寝つきが悪い
体調の悪化により寝つきが悪くなる場合もあります。
◆発熱
ウイルスに感染しているため免疫反応として発熱します。
◆不機嫌
子どもは各症状を「泣く」ことでお母さん方に伝えます。
いつもより調子が悪い・泣き方の違いなどはお母さんにしか分からないでしょう。
よく見てあげて子どものサインに気付いてあげることが大事です。
◆母乳を飲まない
様々な要因が考えられます。
しかし感染により体調が不安定な場合や鼻づまりにより母乳を飲まなくなったり、吐いたりします。
5.RSウイルス感染症の原因
RSウイルスの感染によって起こります。
しかし上述したようにありふれた菌のため感染者の健康状態も大きく影響します。
◆流行時期
例年の11月がピークとなります。
◆流行の推移
出典:IDWR2013年第36号<注目すべき感染症>RSウイルス感染症より
上記の表は国立感染症研究所のRSウイルス感染症の年別・年齢群別割合(2004年~2013年第36週)です。
・グラフ解説
最も近年の2013年のグラフを解説します。
RSウイルスに感染した人を年齢別(2013年) | |
年齢 | 割合 |
0~5ヶ月 | 19.7% |
6~11ヶ月 | 24.4% |
1歳 | 33.5% |
2歳 | 12.7% |
3歳 | 5.3% |
その他 | 4.4% |
1歳児に一番多く、次いで6~11ヶ月児その次が0~5ヶ月児となります。
割合は低いですが、高齢者や成人にも見られます。
もともと体内にあるRSウイルスが抵抗力の低下によって再活性化し発症します。
◆年別の推移
2003年~2013年の1年を通してのグラフです。
以下のような報告があげられています
出典:IDWR2013年第36号<注目すべき感染症>RSウイルス感染症より
・グラフの解説
一年はうるう年などなければ52週となります。
おおまかに分けると、
春:9週~22週(3月~5月)
夏:22週~35週(6月~8月)
秋:35週~48週(9月~11月)
冬:48週~9週(12月~2月)
となります。
2013年は36週までしか表記されていないので、2012年の推移に当てはめると、
2週~11週と36週~52週増加しています。
季節的には冬~春の初め、秋~冬にかけてが増加傾向にあります。
近年増加傾向にある理由は※検査機器の進歩などもありますが、それだけではないことも考えられます。
※2011年10月から外来患者も迅速診断キットの保険適用対象になったためと考えられる。
◆好発年齢
0歳~2歳で、ほぼ100%の子どもが感染しています。
症状が出ない場合でも感染している状態を不顕性感染といいます。
この場合体調の変化によって再活性化されることもあります。
6.RSウイルス感染症の診断と検査
◆RSウイルス検査キット
鼻汁を用いて原因ウイルスを特定します。
以前は、入院患者のみが保険適用でしたが、現在(2011年10月から)は外来患者も保険適用の対象です。
適用条件
・入院中の患者
・乳児(1歳未満)
・※パリビズマブ製剤の適用となる患者
となります。
※パリビズマブ製剤については下記の「9.RSウイルス感染症の予防と対策」をご覧ください。
7.RSウイルス感染症の一般的治療
対症療法と安静にすることが主な治療となります。
対症療法とは症状に対して行う治療の事を言います。
特定のウイルスのみに対する治療薬などはありません。
◆解熱薬
アセトアミノフェンなどの熱を下げる薬
◆鎮咳去痰薬
咳や痰を抑える薬
◆気管支拡張薬
咳を抑える薬
◆当院の場合
RSウイルス感染症の赤ちゃんの症状を楽にする方法【当院の場合】(←おすすめ)
8.RSウイルス感染症の鑑別疾患
◆他のウイルスによるもの
インフルエンザや感冒(風邪)による感染症もあるため、重症度の高い場合は鑑別することが重要となります。
◆肺疾患
喘息の症状を伴う疾患は他にもあるため原因を特定し鑑別します。
9.RSウイルス感染症の予防と対策
先天性の疾患や慢性の肺疾患、低体重児などは重症化しやすいです。
家庭内で気を付けていても感染する場合もあります。
◆薬剤による予防
流行時期の初期から抗体製剤を用いて重症化を防ぐ薬があります。
しかし厚生労働省によっての規定があります。
遺伝子組み換え技術で作成されたモノクローナル抗体製剤のバリビズマブ
・在胎期間28週以下の早産で、12カ月齢以下の新生児及び乳児
・在胎期間29~35週の早産で、6カ月齢以下の新生児及び乳児
・過去6カ月以内に気管支肺異形成症の治療を受けた24カ月齢以下の新生児、乳児及び幼児
・24カ月齢以下の血行動態に異常のある先天性心疾患の新生児、乳児及び幼児
・24ヵ月齢以下の免疫不全を伴う新生児,乳児および幼児
・24ヵ月齢以下のダウン症候群の新生児,乳児および幼児
◆一般的な対策方法
RSウイルスは接触や飛沫による感染で起こります。
これらの感染経路をできるだけ少なくすることが基本的な予防法です。
・密な接触を避ける
・おもちゃなどの乳幼児が触れやすいものは清潔にする。
・タオルや洗面用具の共有を避ける
などがあげられています。
慌てず落ち着いて
「RSウィルス」なんて聞くと驚きますが、読んで来たようにありふれた感染症でみんなが罹るものです。
確かに、初感染、先天性の疾患や慢性の肺疾患、低体重児などは重症化しやすいです。
しかし、多くの場合、発熱と鼻水が主症状で、暖かくして水分補給をこまめにして安静にしていれば、数日で症状が軽快します。
ですから、決して慌てず落ち着いて、お子さんから目を離さないようにしてあげて下さい。
特に呼吸困難の症状は注意が必要です。
また、RSウィルス感染症に限りませんが、「風邪」のように見えて違う病気の事もあります。
お早めにお近くの病院を受診するようにしてください(内科か小児科)。
しかし、夜間や休日に判断に迷う場合は、下記のページを参考にしてみて下さい。厚労省研究班と日本小児学会の監修で大変秀逸かと思います。
対象の1ヶ月~6歳のお子さんのいるご家庭はこの機会にブックマークしておきましょう。
★大阪府の流行状況(更新日:平成29年10月05日)
関連記事:
★風邪(感冒)を早く治す?薬?【よく分かる風邪の基本】(メカニズム、留意点は共通項が多い)
★RSウイルス感染症の赤ちゃんの症状を楽にする方法【当院の場合】
※内容に誤りや情報が古いなどありましたらお手数ですがご一報ください。
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