１．妊娠心煩（にんしんしんぱん）とは？

妊娠心煩とは、妊婦が焦燥感、抑うつ感、憂鬱、びくびくする、驚きやすい、熱感(ほてり)などを自覚することです。
妊娠初期に軽度の熱感を自覚するのはよくあることですが、他の原因によって熱感を自覚するものはここには含みません。

 

２．分類

東洋医学的には妊娠中のほてりと情緒不安定を以下の３つのタイプに分類して、治療や養生指導を行っていきます。
自分がどのタイプなのかを知ることは治癒への第一歩です。
それぞれの特徴的な症状をチェックして、一番チェック数が多かったタイプの解説・対策法を参考にしてみてください。

 

２－１．陰虚タイプ

妊娠５～６か月で焦燥感
イライラがあってじっとしていられなくなる
手のひら足の裏がほてる
午後になると発熱する
水分はあまり欲しない
尿が濃く、少量

 

２－２．肝鬱化火タイプ

妊娠数か月で驚きやすい
イライラ
憂鬱
抑うつ感
怒りっぽい
両脇が張って痛む
ため息が出る

 

２－３．痰火タイプ

妊娠後の動悸
びくびくする
焦燥感
いらいらする
頭が重い
めまい
お腹が張る
口がねばる
気持ち悪い
水曜物の嘔吐

 

３．解説とワンポイントアドバイス

３－１．陰虚タイプ

【解説】
「陰（液）」とはカラダをクールダウンさせる働きを持っていると東洋医学では考えます。
その陰の不足により、もともと熱体質に傾いている方がなりやすいのがこのタイプです。
妊娠により、陰のはたらきは胎児を養われるために使われるため、より不足しやすくなります。
そのため、カラダの中の熱が旺盛になり、ほてりの症状が現れたり、情緒が不安定なります。

【ワンポイントアドバイス】
陰を養うには睡眠が一番重要です。
遅くとも23時には寝るように心がけましょう！

 

３－２．肝鬱化火タイプ

【解説】
陰虚タイプと同じように体が熱体質に傾いている状態ですが、原因が違います。
このタイプは怒り、心配事、悩みなどによってカラダの中に余分な熱を持っている状態です。

【ワンポイントアドバイス】
怒りをコントロールしたり、心配事は悩み事を解決することが根本解決になりますが、それはなかなか難しいかも知れません。
ですから、カラダをよく動かすことで発散させましょう！

 

３－３．痰火タイプ

【解説】
もともと余分な水分が多い方が妊娠した場合に起こりやすいです。
妊娠すると、胎児を養うためにカラダの中の熱が多くなります。
妊娠によって発生した熱ともともとある余分な水分が結びつくことによってほてりと情緒不安定の症状が出現します。

【ワンポイントアドバイス】
お刺身や生ものはカラダの中に余分な水分をためやすくなるので、控えめにしましょう。
飲み物では冷たい緑茶は避け、水分代謝をよくするハトムギ茶を飲むことがおすすめです。

 

４．まとめ

あなたはどのタイプだったでしょうか？
はっきりと、「自分はこのタイプ！」と判断できた方は少なかったかもしれません。
なぜなら、本来は「専門家」がさらに多くの問診や「東洋医学」的検査を行い、材料を集めなければ体質を特定できないからです。

同じ理由で、つわりに効くツボは記載しませんでした。
期待された方はごめんなさい。

他の症状ならともかく、安全第一の妊婦さんですからわずかな危険もあってはならないと思うからです。
しかし、大まかな傾向はお分かりいただけたのではないかと思います。

上記の対策で妊娠中の熱感・情緒不安定の症状が軽くならない方は鍼灸治療の併用をおすすめします。
ただし、一定レベル以上の「東洋医学の専門家」の鍼灸師をお探しください。
（探し方はこちらをご参考ください→「脈診をしない漢方・鍼灸はするな！」）

誤解されがちですが、鍼灸や漢方を使用すれば「東洋医学」ではありません。
鍼灸や漢方は道具に過ぎないのです。
特に妊婦さんは、どんなに慎重にしてもし過ぎることは無いと思われます。
後悔しないために慎重に、慎重に選んでください。
上記リンクは最低基準です。妊婦が受けてはいけない鍼灸治療を除外するためのものです。

「東洋医学の専門家」と言える鍼灸師はなかなか見つからないかも知れません。
一説によると全鍼灸師の1割に満たないそうです。
酷ですが、見つからないときは諦めた方が安全のためにはマシだと思います。
しかし、きちんと東洋医学的に診察・治療すればこれほど安全な医学はありません。

 

 

参考文献：中医研究院　趙金鐸（1987）『症状による中医診断と治療　下巻』神戸中医学研究会編訳，燎原書店．

 

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