感染症, 膝の痛み
11.102017
高齢者や小児の膝の痛みと腫れ【化膿性膝関節炎】の症状・原因・治療まとめ
1.化膿性膝関節炎について
膝に細菌が感染し、膿(うみ)が溜まる病気です。
抵抗力の弱い高齢者や小児に多く、膝関節に次いで股関節・肩関節・足関節に感染を起こしやすいです。
膝関節の周囲が腫れ、激しい痛みにより歩行困難や膝関節が動かしにくくなります。
血行性に感染することが最も多く、その他にも怪我や注射後、膝に人工関節を入れる手術をした後に発症することもあります。
大部分は単関節に起こりますが、15~20%は多関節に感染が起こります。
2.化膿性膝関節炎の症状
◆膝の症状
・膝の痛み
感染による炎症のため、膝関節周囲に激しい痛みが起こります。
・膝関節の腫れ
炎症反応により膝周囲が腫れます。
・可動域制限
痛みのために膝が動かしにくくなったり体重がかけられなくなります。
・熱感
膝の腫れている部分を触れると健側と比べて熱を感じます。
◆全身症状
膝の症状以外にも発熱などの全身症状を伴う場合があります。
ごく初期や弱毒菌への感染、抵抗力の弱い高齢者や小児ではこれらの症状がでない場合もあります。
・発熱、寒気、倦怠感
細菌に対する免疫反応により寒気や悪寒、発熱や倦怠感(だるさ)、食欲不振などの症状が起こります。
3.化膿性膝関節炎の原因
なんらかの感染経路を経て、膝関節に細菌が感染し化膿したものを化膿性関節炎と言います。
黄色ブドウ球菌による感染が最も多く、次いで溶連菌、直接感染を起こす場合ではグラム陰性桿菌が増加しています。
抵抗力の低下している場合では通常なら害にならない弱毒菌による感染もおこります。
◆感染経路
膝へ感染を起こす経路として以下のものがあげられています。
血行性感染が最も多いです。
・膝の怪我によるもの
・膝関節への注射や人工関節の置換術後など
・細菌が血行を通って膝へ流れこむ。(敗血症・扁桃炎・膀胱炎)など
・蜂窩織炎などの化膿巣や大腿骨遠位・脛骨近位で起こった化膿性骨髓炎の波及によるもの
◆感染を起こしやすい要因
・糖尿病
・関節リウマチ
・膠原病
・慢性肝炎
・抗がん剤
・免疫抑制剤
・ステロイド剤
・生物製剤
4.化膿性膝関節炎の検査と診断
◆触診と視診
腫れている部分や可動域の確認を行います。
人工関節の場合、腫れや叩打痛を認めても自発痛や圧痛は著名でないことがあります。
◆血液検査
白血球数や炎症値の検査を行います。
他の臓器の異常なども調べます。
◆画像検査
エコーやMRI、レントゲン、骨シンチグラフィなどで骨の状態を検査します。
感染後4~6日の初期には認められませんが、軟骨化骨の骨萎縮と関節面の不整像が認めることもあり、関節裂隙が拡大して見えることもあります。
◆関節液の検査
黄濁色の関節液を認めます。
白血球数が5万以上で糖値が40mg以下で、全身症状が伴っている場合は関節液を培養し菌の種類を特定することもあります。
5.化膿性膝関節炎の一般的な治療
基本的には安静にし、細菌に対しては薬物を投与します。
場合によっては手術が選択されることもあります。
◆保存療法
・安静・固定
ギプス固定をして安静にします。
・冷却
炎症部位を冷やします。
・関節穿刺
膿を直接注射器で抜きます。
・運動療法
固定に伴う筋肉の拘縮や萎縮を予防します。
・薬物療法
抗菌薬や抗炎症薬を投与します。
点滴で投与することもあります。
◆手術療法
・関節鏡視下郭清術(かんせつきょうしかかくせいじゅつ)
内視鏡を用いて関節内の異物を洗浄・除去します。
・関節切開
関節を切開し膿を排出・洗浄します。
6.化膿性膝関節炎の鑑別
細菌培養で起因菌を特定できない場合は他の疾患が考えられます。
◆偽痛風
ピロリン酸カルシウムなどの結晶が引き起こす急性の結晶性滑膜炎です。
化膿性関節炎と誤りやすい疾患ですが、顕微鏡にて結晶を認めます。
◆関節リウマチ
複数の関節の腫れや痛みを伴う原因不明の破壊性・進行性の関節疾患です。
膝関節の炎症においても罹患率が高く60%ほどのリウマチ患者が罹患します。
◆結核性関節炎
遠隔の結核病巣から血行性に感染、発症します。
7.化膿性膝関節炎の予後と後遺症
大部分の化膿性関節炎は単関節ですが、15~20%が多関節炎です。
この中でも単関節炎の死亡率が4~8%であるのに対し他関節炎では30~40%であると報告されています。
抗生剤の量を調整しつつ治療を行い、症状が落ち着いてきたら細菌の有無を確認します。
人工関節置換術後であれば骨セメントなどに緩みが生じていないか確認し、緩みがあれば抜去することもあります。
関節破壊の程度によっては関節を固定する手術を行う場合もあります。
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