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首の痛みや肩の痺れ【後縦靭帯骨化症】症状・原因・治療まとめ

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1.後縦靭帯骨化症について

後縦靭帯とは、背骨の椎体の後方にある靭帯で、この靭帯が骨化することを後縦靭帯骨化症といいます。
黄色靭帯骨化症とともに厚生労働省の難治性疾患(特定疾患)として認定されている疾患です。
多くは中年以降に発症します。
男女比では2:1で男性に多く、平均年齢は40歳以上で症状があるのは約50歳代に多いです。

・原因
原因不明の疾患で、1975年には「厚生省特定疾患後縦靭帯骨化症調査研究斑」が発足しました。
現段階では、近親者に多く発生することから遺伝が関与しているとされています。
この他にも骨化が好発する部位に一定の高位があるため力学的な因の関与もあげられています。
これらの遺伝的要因に全身性又は局所的な因子が複合して発症することが指摘されています。
骨化する部位によって名称が変わり、頸椎後縦靭帯骨化症、胸椎後縦靭帯骨化症、腰椎後縦靭帯骨化症に分かれます。
頸椎の後縦靭帯骨化症が多いですが、胸椎腰椎にも生じ、二箇所以上において神経障害の原因になることもあります。

・症状

靭帯が骨化することにより神経の通り道が狭くなり、神経の圧迫部位に応じた領域に痺れや運動障害などの症状が起こります。
後縦靭帯の骨化が認められる患者の2割程度は外傷などをきっかけに発症することがあります。
無症状の場合もあります。

・治療
治療としては首の痛みには温熱治療や物理療法、痛みを抑える薬などの薬物療法を行います。
手指が動きにくい、歩行障害や膀胱障害などの機能障害がある場合は手術が考慮されます。
前方法手術後の運動機能改善の治療成績評価では著効24%有効64%改善6%不変5%悪化1%との報告があります。
原因不明なため明確な治療もなく症状が残存することが多い疾患です。

 

2.後縦靭帯骨化症の症状

靭帯が骨化する部位によって圧迫部位が異なるため症状も異なります。
頸椎や胸椎、腰椎の靭帯骨化症が合併している場合、下肢の症状はどちらも原因としてあり得ます。

2-1.頸椎後縦靭帯骨化症の症状

◆頚部の痛み
首筋や肩甲骨周辺の痛みが起こります。

◆痺れ・感覚異常
肩周辺や腕や手などに痺れや感覚異常が起こります。
進行すると痺れの範囲が次第に広がります。

◆運動障害
腕や肩の筋力が低下します。
指先の動きが悪くなりボタンがかけにくくなるなどの巧緻障害が起こります。

◆直腸膀胱障害
病態が進行すると、尿漏れなどの膀胱障害や便秘などの直腸障害が起こることもあります。

2-2.胸・腰椎後縦靭帯骨化症の症状

◆腰背部の痛み
腰背部に痛みが生じます。

◆体幹・両下肢のしびれ
神経が圧迫を受けると体幹や下肢などの圧迫部位から下位に神経症状が起こります。

◆歩行障害
症状が進行すると徐々に歩きにくさなどが起こります。

◆直腸膀胱障害
尿漏れなどの排尿障害、便秘などの直腸障害も起こることがあります。

 

3.後縦靭帯骨化症の原因

 

 

原因不明の疾患です。
日本での一般成人のレントゲンでは1.5~2.4%に本疾患が認められています。
特定疾患として認定される後縦靭帯骨化症の推定患者数は約7400人です。

多くは症状が徐々に出現しますが、約2割の例では転倒や打撲などの外傷をきっかけとして発症または症状が悪化します。

明かな原因は不明ですが、近親者での骨化の発生頻度が高いことから遺伝性の関与が示唆されています。
また全身の靭帯が骨化傾向にあり、骨塩量も増加してるため、糖尿病との関連も指摘されています。
他にも、骨化が好発する高位があることから力学的な因子の関与も考えられています。

遺伝的因子に他の全身性・局所的な要因が関与して発症し、進行するのではないかと考えられています。

骨化巣の多くは一部で椎体後縁と骨性に癒合します。
骨付着近傍の靭帯には変性肥厚がみられ、線維軟骨細胞の増殖、石灰化、血管侵入という軟骨内骨化の過程が観察されている一部には膜性骨化の像もみられます。

 

4.後縦靭帯骨化症の検査と診断

本疾患の固有の徴候や症状はないため画像上に骨化が認められ、症状が骨化に起因するものと判断された場合本疾患と診断されます。
無症候性のものもあるため注意が必要です。
また靭帯の骨化が多椎間に渡る場合、神経学的所見が得にくいです。

4-1.画像検査

頸椎では第5・第4・第6と好発部位です。
側面像で椎体後面の異常骨化陰影として読影されます。
1椎体の高さの範囲内の分節型とこれを超える連続型、両者の並存する混合型その他の型に分類されます。
骨化の広がりは平均で3.2椎体で、混合型・連続型は骨化傾向が強く胸椎後縦靭帯骨化症の合併率は分節型の約10%に対して、混合型・連続型は20%である

胸腰椎では中部胸椎および腰椎部が好発部位です。
CTでは骨化巣形体と脊柱管の狭窄状態の把握に有用です。
MRIではくも膜下腔の閉塞状態や椎間板突出、黄色靭帯肥厚など他の疾患との鑑別に有用です。

 

5.後縦靭帯骨化症の一般的な治療

5-1.保存療法

脊髄圧迫による症状が無い場合は保存療法を行います。
温熱療法や物理療法、鎮痛剤などの薬物療法などを行い、頸椎の固定装具を付けることもあります。

しかし圧迫状態は持続するため効果には限界があります。

5-2.手術療法

保存療法で効果のないものや歩行障害や直腸膀胱障害、手指の運動障害がある場合は手術が考慮されます。
手術を行う際には年齢や骨化の程度、症状の進行度合いなど様々なことを考慮して慎重に決定します。

手術では圧迫部位の除圧術を行います。
手術方法には前方法・後方法がありますが、基本的な成績の差はみられていません。

胸椎後縦靭帯骨化症では相対的に重症例が多いことから安静固定を目的とした保存療法の意義は頸椎部よりも低いため手術が考慮されます。

6.後縦靭帯骨化症と間違いやすい疾患

麻痺症状が出現している場合は他の重篤な疾患との鑑別も必要となります。

◆変形生脊椎症
◆強直性脊椎骨増殖症
◆強直性脊椎炎
◆椎間板ヘルニア
◆脊椎奇形
◆脊髄腫瘍
◆筋萎縮性側索硬化症
◆副甲状腺機能低下症
◆ビタミンD抵抗性リン血症性くる病・骨軟化症
◆筋緊張性ジストロフィー
◆遅発性脊椎骨端骨異形成症
などの様々な脊髄変性疾患が鑑別の対象となります。

 

7.後縦靭帯骨化症の予後と後遺症

基本的に頚痛や腰背部の痛みでは保存療法で経過を観察します。

前方法手術後の運動機能改善の治療成績評価では著効24%有効64%改善6%不変5%悪化1%との報告があります。
手術を行ったとしてもなんらかの症状が残存することもあります。
明確な原因が不明なため、確立された治療は現在のところありません。

 

 

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